「しんぶん赤旗」2009/10/9
開け排水門 
漁業も農業も守れ

 長崎県の国営諫早湾干拓事業。その潮受け堤防排水門の開門をめぐるたたかいが山場を迎えています。公共事業の見直しを訴える民主党中心の新政権が誕生するなか、世論の力で開門を勝ち取ろうと漁業者や支援者は取り組みを強めています。(長崎県 原口一二美)


「今年は獲れると楽しみにしていたのに・・・」。8月、長崎県・諌早市小長井で漁業を営む松永秀則さん(58)の養殖アサリが全滅しました。赤潮です。

 潮受け堤防をのぞむ養殖場で、口を開けたまま死んだ貝を見つめ肩を落とす松永さん。「調整池からの排水が原因」と悔しさと憤りをにじませます。
(写真左)

 かつて、「宝の海」と呼ばれた有明海。諫早湾が閉め切られてから異変が続いています。のりの色落ち、養殖アサリの大量死。たくさん獲れていた魚や二枚貝のタイラギも獲れなくなりました。漁業者の生活は困窮し、自殺者も20人を超えています。漁業者は、異変は堤防閉め切りによるものだとして、開門を強く求めています。

 開門を求めて裁判をたたかう漁業者や支援者はこれまで繰り返し県庁前や繁華街で宣伝してきました。9月14日、松永さんは県庁前でマイクを握り、提防を閉め切ってからの有明海の異変と漁業被害、かたくなに開門を拒む県を告発。新政権に「ムダで有害な公共工事にストップをかけてほしい」と訴えました。

 新政権に漁業者は開門への強い期待を抱いていますが、民主党の対応はどうか―。

 佐賀県選出の同党国会議員らが開門を求める一方、長崎県連は防災効果を損なうとして開門に反対。地元党組織の意向を反映して民主党のマニフェストに開門は盛り込まれませんでした。

 諫早湾干拓地周辺の農民・住民には開門に反対する声があります。長年、農地が浸水する湛水被害に苦しみながらも放置されてきた住民にとって潮受け堤防は待ち望んだものでした。

 「堤防のできてほんに助かっとります。浸からんし、潮もかからん」。諫早湾に面した雲仙市吾妻町の旧干拓地で農業を営む男性は、日本共産党の仁比聡平参院議員との懇談でそう語りました。

 「よみがえれ!有明海」訴訟弁護団は、7月に発生した湛水被害(写真右)や農業に使えない調整池の水質問題などを指摘。

 湛水被害を防ぐための排水機場の設置や調整池に代わる農業用水の確保など具体的な開門のための対策を示し、これらの対策をとれば「すぐ開門はできる」し、そうすることが農業を続ける道でもあると訴えてきました。

 同訴訟を支援する会が14日開いた決起集会で馬奈木昭雄弁護団長は、「漁民はまったなしの状況」だとして、急いで新政権に来春の開門のための予算を組ませる必要があると述べ、その実現を迫るために長崎県での世論の喚起を強く呼びかけました。

 農業と漁業の両立と有明海再生へ、「よみがえれ!有明海」を支援する会では開門反対の声が多い諌早市で市民と対話を進めています。

 弁護団の一員でもある仁比議員は先の集会でこう発言しました。「有明海再生にこそ自民党政治に代わる新しい政治の試金石がある。新政権に開門の政治決断を迫るため力を尽くす」。