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核廃絶へ
「マレーシア原爆展」に参加して
             長崎県原水協 常任理事 川口龍也
       川口龍也さんから、このホームページに寄稿していただいた原稿を掲載します。



イスラム大学の校庭で、被爆絵について説明する川口さん
                          
 日本の草の根運動は、「人を変え、国を変え、世界を変えつつある」

  1月11日から20日までマレーシアの首都クアラルンプールでマレーシア政府が後援し日本原水協とマレーシアNGOが共催した「マレーシア原爆展」に日本原水協代表団25人の一員として参加してきました。

 マレーシアはかって日本政府の侵略戦争によって多大の犠牲者を出しました。現在は、国連で世界の平和と核兵器廃絶の実現をめざして非同盟諸国のリーダーとして先導的役割を果たしています。

 熱帯の暑い日ざしのもと、マハティール前首相の訪問はじめ外務省(モハマド・カマル事務局長代理)、2つのNGO(反戦NGO・公正な世界をめざす国際運動、ペルナダ世界平和協会)、3つの大学4会場(国際イスラム大学、マラ工科大学、マレーシア・ケバンサーン大学)、2つの会場(イスラム大学、クアラルンプール市内セントラルマーケット)等で、意見交換やシンポジウム、公開セミナー、交流会、「原爆展」、署名行動を旺盛に行ってきました。

 実質6日間の滞在中、マハティール前首相夫妻、マッコイ元IPPNW会長はじめ5000人の学生、市民が原爆展に参加し、マハティール前首相、カマル外務省事務局長代理等から署名2100筆が寄せられました。

 代表団は、2010年NPT再検討会議にむけた「被爆の実相」普及と核兵器廃絶の世論と運動の喚起、マレーシア政府との連帯強化という当初の目的は大きな成功のもとに達成されたものと思っています。

 私は長崎市長から託された「メッセージ」と「原爆の記録」等3冊及び被爆者等からの募金で購入した「広島・長崎被爆組写真」(17枚組)50組を手渡しました。
 広島6人、長崎2人の被爆者とともに被爆体験を語り、核兵器の廃絶を訴えましたが、まさに、日本の草の根運動が、「人を変え、国を変え、世界を変えつつある」との思いを強くするとともに、核兵器廃絶の実現にむけ、新たな希望と確信を実感してきました。

 大学生の新鮮で率直、若々しいエネルギーに感動

 国際イスラム大学(学生2万人)では、食堂のせせこましい通路や炎天下の芝生での「原爆展」となり、先行きがとても心配でした。
 被爆絵を芝生に並べ始めると学生が、次々に近寄ってきて、熱心に見て廻り、署名にも積極的に応じました。

 私は「被爆写真パネル」の前で、被爆の状況を説明すると、どの学生も驚いた様子で「なぜ、アメリカは原爆を落としたのか」、「被爆時はどこにいたのか」などと熱心な質問がありました。

 このようなことが、再び起こらないよう、ともに、がんばろうと話すと、どの学生からもそうだ、という答えがかえってきました。日本では体験したことがない、新鮮で素直、若々しいエレルギーに感動しました。

「被爆の実相」普及は、核兵器廃絶運動の原点

 私は、マラ工科大学マラッカ校のセミナーで300人の学生を前に高草木・日本原水協事務局長、田中・日本被団協事務局長、広島の被爆者・高東氏とともに報告・発言しました。

 ビデオ上映や「写真パネル」の想像をこえた惨状を見て、涙する姿が数多くありました。
 1発の原爆が都市を壊滅し、無数の犠牲者を出し、生き残った被爆者は、いまも、多くが後遺症に苦しみながら生きていること。2万6千発もの核兵器が世界にあり、1日も早く廃絶すること。そのお願いのために、日本から来たのだと訴えると大きくうなずいていました。

 まさに、「被爆の実相」を知ることこそが、運動に立ち上がる原点であることをあらためて痛感しました。

 「原爆展」の成功を契機に、2010年NPTへむけ、新たな運動のうねりを

 マレーシアと日本の被爆者・原水爆禁止運動の新たな前進にとって、内容的にはきわめて大きな意義があり、画期的な成功だったと思います。

 核兵器廃絶で先駆的な役割を果たしているマレーシアは、希望の灯台です。しかし、国内には草の根運動がないといわれています。
 そこに、種を蒔いてきましたので、今後、草の根運動が一気に発展するという希望と確信を強く抱いて来ました。

 「被爆組写真」募金等にご協力いただいたみなさまに心から感謝いたします。2010年NPTへむけ、長崎では2009年世界大会、平和市長会議総会等が開催されます。運動を飛躍的に発展させ「長崎を最後の被爆地に」するために、さらに力を尽くしたいと決意しています。   

青年に被爆体験を語る川口さん(左)

ケバンサーン大学で記念撮影

マハティール前首相に、長崎市のメッセージを渡す川口さん

マハティール夫妻と。黄色いゼッケンが川口さん

マラ工科大学マラッカ校で被爆体験を語る川口さん

川口さんの被爆体験を聞く、300人の大学生たち

カマル外務省事務局長代理と記念写真