「しんぶん赤旗」2008/9/24
長崎NOW
県庁移転本当に必要?
欠落する「まちづくり」

 長崎県が、県庁舎を新築移転させる計画が急浮上し、県民に十分な説明もないまま進められていることに批判の声が強まっています。何が問題か、みてみました。(長崎県 原口一二美)

 県は、現庁舎の問題点として、@庁舎の分散化・狭隘化・老朽化A耐震化の緊急性を上げています。庁舎の借り上げ費や改修費に多額の経費を要し、県民サービスや効率的な行政運営に支障をきたしているとし、各地で地震が多発しているなかで防災拠点施設として耐震化は喫緊の課題だとしています。

 県は、庁舎の新築移転(県庁・県警本部・議会棟)に約四百五十億円を見込んでおり、その財源として一九八九年より積み立てている三百六十六億円の「県庁舎建設整備基金」を活用、残りを県債で賄う計画です。

 県知事が昨年六月議会で県庁舎のあり方について検討を進めることを表明。十一月には、県庁内部に「県庁舎整備検討委員会」を設置し、魚市跡地移転の方向を示しました。

 魚市跡地は一九九七年に高田勇前知事が「県庁舎建設懇談会」などの議論をふまえ、建設場所として「最適」と表明。建設予定地の埋立工事が進められ、二〇〇九年度に工事が完了する予定です。

 このような動きに対し、長崎市中心部の商店街・自治会は疑義を呈し、「県庁舎整備計画を考える会」(松田祥吾代表ほか)を結成。九日には長崎市で「『まちづくり』市民集会」を開催し、市民に「まちづくり」について考えようと呼びかけました。

 集会で、黒崎羊二・まちづくり研究所所長は、「施設の機能、執務環境だけで決定すべきでない」と述べ、共同のまちづくりの重要性を訴えました。
 鮫島和夫長崎総合科学大学教授は、「災害は地震だけでない」と述べ、埋立地への移転に水害時の危険性を指摘しました。また、現庁舎の耐震化費用の試算に対する疑問や「すでに決まったことのように進めるのは納得できない」と県の説明責任を追及する意見も出されました。

 日本共産党長崎県委員会は今月初旬、松田氏ほか、市中央地区商店街連合会役員と懇談。移転反対の運動に共感の意を表明しました。

 松田氏らは、県庁移転は、江戸時代から続く浜の町を中心とした中央地区の商店街を衰退させると述べ、県民に何の説明もなく計画が進められていることを批判。県財政が厳しいときに新庁舎を建設することに疑問を投げかけました。

 長崎県議会は、このような県民の声を受け、県内五か所で「県庁舎整備について県民の声を聴く会」を開催。
 「聴く会」では、「改修はメリットがない。新庁舎建設を」「安心安全のまちづくりのためには必要」など賛成の意見が出される一方、財政難や防災上の問題が指摘され、「移転ありきだ。まちづくりの観点がない」など反対の意見も相次ぎました。

 日本共産党の堀江ひとみ県議は、県庁移転について、「地元商店街の合意は必要です。県民の中には全国最下位の小中学校の耐震化はどうなるのか、との疑問があります。様々な点から大いに論議して、県民の合意が求められると思います」と話しています。