2007年5月17日(木)「しんぶん赤旗」

諫早湾閉め切り10年 第2部

まやかしの公共事業(7)

干拓 各地で営農失敗


写真

(写真)河北潟干拓地の農作業風景=15日、石川県かほく市(石川県・森明雄撮影)

 全国の干拓地の現状はどうなっているのか?

 長崎県の農業振興公社への公金支出差し止め裁判をたたかっている弁護団(団長・馬奈木昭雄弁護士)が干拓地の現地調査も踏まえて現状を明らかにしています。それによると―。

遊休農地

 石川県の河北潟干拓地は千三百五十六ヘクタールで、一九七九年に農地配分。八年後の八七年には「遊休農地」が深刻化し、石川県農業開発公社が離農農家の農地を取得することに。現在干拓面積の23%、二百四十三ヘクタールを公社が保有したままです。

 弁護団は「『遊休農地』の存在は営農が成功していないことの表象」と指摘しています。

 島根、鳥取両県にまたがる中海干拓地約六百ヘクタールは九二年までに造成。

 両県とも公社が全部買い取りました。しかし農地面積の14%、八十三ヘクタールが売ることも、貸すこともできずに公社に保有されたままです。島根県側の干拓地では、年々作付け作物が減り、二〇〇三年の出荷実績は九九年から約40%も減っています。

 岡山県の笠岡干拓地は千八百十一ヘクタール、九〇年に完成。農業情勢の変化で、四百六十ヘクタールを工業用地などに当初計画を変更。農作物を空輸する目的の「農道離着陸場」(農道空港、五ヘクタール)は赤字経営で、ラジコン飛行機大会など、農業生産に関係のない利用がされています。

 総面積約千二百ヘクタールの岡山県の児島湾干拓地では、総戸数五百九十五戸のうち、非農家率は37%、二百十九戸にのぼります。

 長崎県森山町の旧諫早湾干拓地は総面積三百四十一ヘクタールで六四年に完成。全部で四十六戸の入植農家がありましたが、これまでに43%に当たる二十戸が離農・転出。諫早湾干拓地の営農の厳しさを示しています。

法に違反

 弁護団は、いずれの干拓地も「実際の営農はうまくいっておらず、計画のずさんさが浮き彫りになっている」とのべています。しかも干拓地の営農の困難さは、八〇年ころから指摘されて、再三見直しを迫られます。弁護団は八〇年当時の会計検査院の報告書や九八年の行政監査結果を紹介しています。

 会計検査院の報告によると、全国の国営干拓事業百八十三地区のうち(1)事業廃止が十一地区(2)事業中に農地造成等の目的変更が十七地区(3)完成後の用途変更十三地区(4)工事が完了しても未配分の地区が三地区(5)工事途中で休止した地区が二地区―。

 これらの状況は、干拓地の多くで当初の営農計画がうまくいかず、途中で見直されていることを示しています。

 このため干拓地を抱える自治体では、営農の負担の軽減や失敗是正などのために多額の補助金が支出されています。弁護団はそうした実例を紹介し、県農業振興公社に関する支出は結局、「県の財政を悪化させ、県民の暮らしに必要な予算が減額される」と指摘。「最小の経費で最大の効果」を求めている地方自治法や地方財政法にも違反する、と強調しています。(つづく)