「しんぶん赤旗」2006/11/10
五島列島に党国会調査団
郵便集配廃止に自治体も怒り
離島の切り捨てだ

 「集配郵便局の集配業務廃止で離島はどうなるのか」|。春名なおあき元衆議院議員(参院比例候補)ら日本共産党調査団が訪ねた長崎県五島列島の五島市と新上五島町でも、「約束が違う」と厳しい批判の声が相次ぎました。(長崎県・田中康)

   
新上五島町で 
一昨年八月、五島列島北部の五町が合併して誕生した新上五島町。郵便集配を担ってきた町内六局のうち、中心部にある毎日三千二百通を扱ってきた有川郵便局と千五百通を扱う魚目郵便局の集配を廃止し青方郵便局に統合する計画です。
 「法務局がなくなり九州電力は縮小、こんどは郵便局か」と、住民だれもが不安でいっぱい。井上俊昭町長と津田祐一議長は連名で、「計画強行は経営効率だけを追い求めるもので離島の切り捨てにつながる」と、郵便局の機能維持を求める要望書を公社に提出しました。同町の江上悦生助役は、「局に人がいなくなること自体がサービス低下、地域の活性化どころか町の元気を奪う」と訴えました。
 有川地区に住む石橋えい子さん(55)は、「やがて郵便局そのものがなくなり、過疎でますますさびれるのでは」と話しています。
   
五島市では
 集配局が十カ所ある五島市では、久賀島と椛島の二つの島の集配局が廃止対象。市役所がある久賀郵便局福江島の福江郵便局に統合する計画です。
 福江から海上タクシーでも十五分かかる久賀島は人口約五百五十人、二百八十世帯の半農半漁の島です。鉄筋の立派な中学校もありますが生徒はわずか七人。高齢者が五割です。

 久賀島郵便局は十数年前、「人が集まるコミュニティーの場に」と提供された土地に、藤原茂昭現局長がつくったモダンな建物です。局長のほか、内勤二人と外勤二人(うち一人はパート)が協力して働いています。フェリーが出入港する時刻に合わせ、朝七時十分から夕方六時五分まで年中開かれています。取り扱う郵便物は一日百五十通以上、局舎には一日七十人以上が集います。「住民にとってここは安全・安心の場所なんです」と胸をはる藤原局長。訪ねた日も朝七時前から住民が、米や野菜の小包を抱えて待っていました。

 郵便物を配達する男性職員(55)は勤続三十五年のベテラン。島のすみずみまで知り尽くし、書留郵便などは田んぼや畑まで届けます。「翌日に持ち越す郵便物はゼロ。配達途中で農機具の修理を手伝ったり、体調が悪くなった住民を発見することもある」といいます。
懇談する中尾市長(中央)と春名氏(その左)。左は江川美津子市議   
 自治体とともに春名さんが決意
 「(集配業務廃止で)平和な日常が大きく変わるでしょうね」。
 公社の計画が実施されれば、「局長と内勤の一人が残るだけ、外勤職員は福江局に移動。島内の郵便配達は公募による委託」です。窓口業務は八時五十分から午後五時三十五分まで。土日と祝日、年末年始は休業となります。

 藤原局長は、「パートを入れないと、残った職員では防犯上、集荷も外出もできなくなりますね。給与を払うためには集配の目標もあるし…」と不安を隠せません。

 住民の要望解決や委託者の監督も福江郵便局長となります。郵便と窓口、郵貯、保険を無理やり分割することにも疑問が広がります。
 春名氏と懇談した五島市の中尾郁子市長は、「今まで通りと聞いていた」と前置きし、「島を都会と同じように画一化するのは不合理。島には島の効率的なやり方がある」と、自治体として実態を調べ検証することを約束しました。
 春名氏は、「郵便局は地域の宝、住民の財産です。住民の利益を守るため、自治体とも力をあわせてがんばりたい」と話しています。