「しんぶん赤旗」2023/6/21

核ごみ 押しつけるな
長崎・対馬 誘致反対 巻き起こる運動

 長崎県の離島・対馬(つしま)の自治体、対馬市で原発から出る高レベル放射性廃棄物「核のごみ」の最終処分場を誘致する動きが起こり、誘致反対の住民運動が巻き起こっています。(田中正一郎)

 「『核のごみ』と聞けば食べたくないと思うのが消費者心理。島に悪いイメージをつけられたくない」と話すのは上対馬町漁協の藤原圭一さん(46)。他の産地との競争の中、「魚の値段をたたかれる要素の一つになる。アマダイのブランド化で価値を高める取り組みも全部だめになる」と訴えます。

 対馬は、韓国までの距離が約50キロの「国境の島」。入り江が連なるリアス海岸や島独特の生態系など自然に恵まれ、漁業や林業、観光業が盛んです。 


@不安寄せられ

 処分場誘致では、前提となる「文献調査」を受け入れた段階で国から2年間で最高20億円が交付されます。市商工会や建設団体から人口減少の中、地域振興として検討を求める議論が起こされており、漁業者や観光業者からは風評被害への不安が寄せられています。

 観光客も訪れる飲食店の女性経営者は「『核のごみ』を話すこと自体気分が重く、不安になる」と打ち明けます。反対派、賛成派で島民が分断されることに、「もう被害が始まっている」と指摘。循環型産業など未来につながる議論がしたいと話します。

 対馬市議会の6月議会には、受け入れ反対と受け入れの議論を求める双方の請願が出され、反対派の請願には島内外から2万人分を超える署名が寄せられています。小島徳重市議(無所属)は、「当初、市議会で反対の市議は(定数19のうち)3人だけだったが状況が変わってきている」と強調。2006年から07年にかけ誘致が議論されたときには市議会が反対決議を可決した経緯にふれ、「署名や集会で多数の市民が集まれば市議たちも支持者・支援者の意向を無視できなくなる」と受け入れ反対の請願可決に意欲を示しています。

 10日、「核のごみと対馬を考える会」が開いた反対集会には、市民530人が集まり、市内をデモ行進。上原正行代表は「小さな幸せのある、持続可能な島として今まで安心して暮らしていたところに突如蒸し返された『核のごみ』の議論。これはいかんと集まった。集会をきっかけとして、比田勝尚喜市長や市議会に中止の決心を求めたい」と話しました。

@次世代に影響

 若者や子育て世代からは、次世代への影響を訴える声が上がります。漁業研修制度で漁師を目指す築城陽聖(ついき・ひさと)さん(23)は、これから漁業で生きていこうという人間として先の世代のことも考えたいとし、「子どもたちが漁師になりたいと思ってもらえるような島にしたい」と反対を表明。4人の子どもを育てる大山恵子さん(44)は、核物質の健康面への影響を心配し、「もし核のごみが来るなら安心して住めない。子どもたちがいつでも戻ってこれる故郷であってほしい」と話しました。 

 集会に駆け付けた日本共産党の堀江ひとみ県議は「住民の思いは被爆県・長崎としても、当然の思いです。地元の共産党支部も、署名活動などで頑張っています。住民の思いに寄り添い、誘致させないために、一緒に頑張りたいと思います」と語りました。