「しんぶん赤旗」2023/6/28

国営諫早湾干拓事業営農者訴訟判決

 国営諫早湾干拓事業(長崎県諫早市)の干拓農地に入植した農業者(3法人・1個人)が調整池のあることで起こる冷害やカモの食害、排水不良などにより甚大な被害を受けたとして、農地の賃貸人である県農業振興公社と国、県に対し、損害賠償や潮受け堤防排水門の開門を求めた訴訟の判決が27日、長崎地裁で出されました。

天川博義裁判長(松永晋介裁判長代読)は農家の大崎吉重氏(68)の農地に嫌がらせでテープを張り、バレイショの作付けを制限したことは営農妨害だとして、約49万円を支払うよう公社に命じましたが、その他の被害についてはすべて退ける不当判決でした。

判決では、カモの増加や冷害・熱害は潮受け堤防の締切り及び調整池の造成に起因するとは認められないとしました。

排水不良に関しても、排水設備の状況に不備があったとしましたが、裏付ける証拠がないなどと被告の責任は認めず、欠陥農地を優良農地だと虚偽宣伝したとの主張についても否定しました。

判決後の報告集会で大崎氏は「テープが張られた農地では約1千万円の収穫が見込めた」と憤り、同じく原告の「匠(たくみ)集団おおぞら」の荒木隆太郎さん(75)は「生産者の責任であるといわれ悔しくて仕方がない」と語りました。

グリーンファームの勝田考政さん(46)は「公社は責任すらも負わなくていい状況だ。営農地の実態はすごく厳しく、困っている人はたくさんいる。今後も裁判で求めていきたい」と話しました。