「しんぶん赤旗」2016/07/29
諌早湾干拓訴訟 和解協議
有明海再生へ開門を
 国営諫早湾干拓事業(長崎県諫早市)の潮受け堤防排水門をめぐる開門差し止め訴訟の第7回和解協議が27日、長崎地裁(松葉佐隆之裁判長)で開かれました。

長崎地裁
 早期開門を求める漁業者側、開門に反対する干拓地営農者側、国の3者が出席。"開門に代わる漁業環境改善策"として国が提案している有明海振興基金(仮称)について、漁業者側の「よみがえれ!有明海訴訟」弁護団は、「有明海の漁獲量は減る一方で、これまでの『開門なし』を前提とする漁業対策の事業は全く効果を示していない。基金による取り組みが成果を出さないことは明らかで、開門によって漁業環境改善を目指すべきだ」と反論しました。

 裁判長は国に対し、次回(9月6日)の和解協議までに有明海沿岸の4県(福岡、佐賀、熊本、長崎)と4県の漁連に基金案についての意見を聴取するように指示しました。

 基金案をめぐっては、3県(福岡、佐賀、熊本)の漁連・漁協でつくる対策委員会も「有明海の環境悪化の原因を究明するため、開門調査が必要だ」として拒否する姿勢を示しています。

 同弁護団の馬奈木昭雄団長は記者団に対し「漁連の意見が報告され、国の案では解決できないことが客観的に明らかになると期待している」と述べました。

世論高めること重要
報告集会で馬奈木弁護団長

 「よみがえれ!有明海訴訟」弁護団と同訴訟を支援する長崎の会は27日、第7回和解協議を受けて報告・学習集会を長崎市内で開きました。

 約40人が参加し、和解協議が山場を迎えるなかで、「開門なくして有明海再生なし」の立場を貫くことが確認されました。

 弁護団の馬奈木昭雄団長は「3県(福岡、佐賀、熊本)の漁連が国の和解案を認めないという立場を守り抜くためにも国民の世論を高めることが重要になる」と強調しました。

 堀良一弁護士は、2004年に国が提案した中・長期開門調査に変わる取り組み(二枚貝の増殖対策など)と比較しても「今回の国の提案に新しいものはない」と指摘。「開門に変わる有明海再生事業は非現実的で、開門した上で農業に悪い影響が出ないようにする方法についての議論に転換させたい」と語りました。

 参加者からは「裁判所は公平な立場で審理すべきだ」との意見も出されました。

 長崎市の山崎倉俊さん(61)が「多くの県民は『開門すると大変なことになる』と思い込まされている。弁護団と支援する会が力を合わせ、全ての県民に事実を伝えることに全力をあげよう」と呼びかけると、賛同の拍手が起こりました。