「しんぶん赤旗」2016/01/29
住民運動で実現した保育所
民間移譲やめて
反対署名1942人分保護者ら提出
 長崎市は香焼保育所(同市香焼町)の民間移譲を進めようとしています。住民運動によって実現した地域密着型の大切な保育所を守ろうと、住民が一体となって反対しています。(長崎県・村ア利幸)

長崎市香焼町
 香焼保育所の「保護者会」と、元保護者や元保育士のOBらでつくる「すこやかな子どもの育ちを考える会」(山下優子会長)は共同で15日に民間移譲の白紙撤回を求める陳情を提出しました。

“寝耳に水だ”
 保育所は1964年、唯一の企業だった炭鉱が閉鎖され、町は赤字再建団体という財政的に厳しい時代に、住民の要求に基づいて保育所建設を申請しました。国も県も「保育所の建設は難しい」と回答していましたが、町と町民が一体となって国に要望し、66年に建設されたものです。

 香焼町は、2005年に長崎市に合併。その翌年に「市立幼稚園・保育所課題検討懇話会」という市の審査機関がつくられ、「民間に事業を委ねることが可能なものについては、民間活力を活用する」という行革大綱を受けて、06年の懇話会で「民間移譲する」との方針を出しています。

 しかし、香焼保育所については何の説明もありませんでした。昨年8月に民間移譲の説明会を初めて開き、関係者は「寝耳に水だった」と口をそろえます。説明会は昨年10月、今年1月と続けて開いています。しかし、保護者は懇話会や行革大綱の話は知りません。保護者は、市の説明に困惑しました。

 昨年11月28日の「まちづくり委員会」で、市が「17年度4月に民間移譲する。2月議会で上提する」と説明し、波紋が広がりました。それを受け、昨年12月16日に始まった同保育所の民間移譲の白紙撤回を求める署名は、人口約4200人の香焼町で、町にゆかりのある人を対象に約1カ月で1942人分が寄せられました。しかし、市は「今後とも説明会を行っていく」とのべるにとどまりました。

負担子どもに
 元保育士の山下会長は、民間移譲された保育所の保護者から「体操服や教材を買うのに、保育料以外の出費がありました。公立保育所では、保育料ですべて賄っています。民間になったら、経済的負担があった」との声があったと紹介しました。

 「一番は、子どもたちの心理的負担です。慣れた先生がいなくなることと保育内容が変わることで、子どもたちはものすごく不安を感じています。今、特に0歳から2歳児未満のお母さんたちが不安に思っています」と民間移譲の問題点を語ります。「子育てに安心感を持つためには、長い間の蓄積された保育の経験と、お互いの信頼関係というのが必要です。公立保育所のいいところは、子どものために最善の利益を追求できるという点です」と語りました。

 陳情で交渉に参加した障害者の子どもを持つ保護者は「子どもを二つの保育園に頼んだが、断られた。香焼保育所は厚遇で健常者の子どもと同じ扱いで受け入れてもらえた」と涙ながらに訴えました。

 日本共産党の大石史生市議は、昨年の9月議会で住民運動によって実現した保育所の民間移譲は「住民の合意が必要」と取り上げて質問しています。大石市議は「保護者が涙を流して訴えているのに、その気持ちを踏みにじって強行するのは許せない」と話しています。