「しんぶん赤旗」2015/12/25
長崎「新幹線」計画
FGT見通し立たず 20分程度の短縮に5千億円
税金は県民のくらしに 長崎・堀江県議が計画見直し主張
 国土交通省は九州新幹線西九州ルート(長崎「新幹線」)に導入する軌間可変電車「フリーゲージトレイン」(FGT)の開発計画が大幅に遅れることを明らかにしています。しかし、2022年度開業予定は変更していません。計画そのものの見直しが求められています。
(長崎県・村ア利幸)

 FGTは、レール幅の異なる新幹線と既存の在来線を直通運転することで、建設費を抑制できるとして開発がすすめられてきたもの。@軌間変換を確実に行うことA在来線を現行の最高速度時速130キロ目標で走行できる基本性能の確認B新幹線上を時速270キロの高速度で走行できる基本性能の確認C車両が一定期間使い続けることができる耐久性―の四つの目標を掲げて、約20年間、約400億円の開発費を注ぎ込んでいます。

 国は、FGTの走行性能が確認されたので、時速260キロの高速走行を繰り返し行う耐久走行試験を開始しました。しかし、喧怎Lロ走行予定だったのが、約3万キロ時点で不具合が確認され、走行試験を中止しています。

 長崎「新幹線」は、計画自体に問題があります。費用対効果は「1・1倍」と採算ぎりぎりで、時間短縮効果は現行の在来線特急「かもめ」(最速1時間48分)と比較して、博多―長崎間で28分にすぎません。しかも、「かもめ」の停車駅を「新幹線」並みに絞れば、実質的に20分程度の短縮にしかなりません。また、新たに新幹線のレール幅で建設される武雄―長崎間の建設費5000億円で、1分の短縮に250億円もかかります。

開通は困難

 日本共産党の堀江ひとみ県議は、国土交通省の軌間可変技術評価委員会が「22年度までに全線開通が困難」と報告(4日)したことを受けて、県議会に出された「九州新幹線西九州ルート(長崎ルート)の整備促進に関する意見書」の反対討論を18日に行いました。

 県民からの「長崎『新幹線』よりも、最近多発する水道管破裂など老朽化したインフラ整備を急いでほしい」との声も紹介し、堀江県議は「完成の見通しのないFGT導入を前提に進めることは、安全の点でも、税金を大事に使う点からも大問題です。ムダな事業をなくし、県民のくらしのために税金は使うべきです」と討論しました。しかし、日本共産党以外、「オール与党」の県議会で、この意見書に反対したのは、堀江県議ただ一人でした。

 私たちの税金をどう使うか―。県民の声に背を向ける県議会のあり方に、疑問の声が上がっています。

 フリーゲージトレイン(FGT) レールの幅が異なる新幹線(1435ミリ)と在来線(1067ミリ)を行き来するため、車輪の間隔を変える機能を備えた新型電車。日本では1998年から研究・開発が続けられているものの、実用化のめどは立っていません。