「しんぶん赤旗」2015/01/16
住宅地に病原体研究施設
長崎大の推進請願、市議会採択
住民の声聞かない長崎市
市民団体「反対運動進める」
 「エボラ出血熱」などを引き起こす危険なウイルスを取り扱う研究施設(BSL―4施設)を長崎大学が長崎市の約2万人が暮らす住宅密集地・坂本地区に建設しようとしている問題で、昨年12月、市議会は大学側の推進の請願を採択しました。住民の声を聞かない行政の姿勢に批判が集まっています。
(長崎県・村ア利幸)

 市議会には、反対・推進の双方から陳情・請願が出されていました。危険な施設建設に反対する請願・陳情を出したのは、「くらしと地域を考える長崎市民の会」(吉田省三代表委員・長崎大学経済学部教授)、「BSL―4に反対する周辺住民の会」(下田豊代表)、「長崎大学バイオハザード予防研究会」(勝俣隆代表・長崎大学教育学部教授)の3団体でしたが、すべて不採択となりました。

協力姿勢示す
 市の武田敏明企画財政部長は、市議会での長崎大学の推進の請願採択を受け、地元紙(「長崎新聞」2014年12月6日)で、「共に(市民の理解などの)課題解決に当たる」と大学側への協力に前向きな姿勢を示しています。

 こうした市の姿勢に、日本共産党の中西あつのぶ市議候補(前市議)は「住民を中心として署名運動などが継続して行われており、危険な施設を造ってほしくないという中で、住民を説得していくとの立場はおかしい」と批判しています。

 3団体は、県議会にも日本共産党の堀江ひとみ県議が紹介議員となり請願を行いましたが、不採択となりました。

地元合意必須
 堀江県議は賛成討論で「静かな住宅密集地になぜ、危険なものを持ってくるのか。あの原発だって事故が起きた。絶対安全・安心とは言えない」と周辺住民の声を紹介。「エボラ研究に反対しているわけではなく、危険な病原体の研究・実験を住宅密集地に隣接する坂本キャンパスに計画することが理解できないと主張しています。外国でウイルスが外部に持ち出された事例もあり、事故・事件・災害のない研究はできない」とのべ、地元の合意形成が必須条件だと強調しました。

 「市民の会」の吉田代表委員は、市議会が大学側と同じ立場を取っていることについて、「市長と市議会の意見が一致するとは思えない。市長の答弁を待って、運動を進めていきたい」と話しました。「市民の会」は、31日に報告会を開き、これまでの経過を伝え、今後も運動を呼びかけていく方針です。

BSL―4(バイオセーフティレベル4) アフリカや南米などから死亡率が高く治療法も確立していない第1種病原体(ウイルス)を持ち込んで研究する施設。建物はコンクリートで二重に密閉され、実験室の排気もフィルターで99・97%の病原体を除去可能としています。しかし、針刺し事故やフィルターが外れるなど、外国のウイルス漏出の事例も報告されています。