「しんぶん赤旗」2015/01/11
ムダな事業やめ ふるさと守ろう
佐世保・石木ダム建設
県は裁決申請やめよ
 長崎県と佐世保市が川棚(かわたな)町・石木(いしき)川に建設を計画している石木ダム事業で、県は土地の強制収用を可能とする裁決申請手続きを進めています。ダム建設に反対する住民・支援者らは「ふるさとの美しい自然を守れ」と粘り強く運動。県政の大きな争点の一つに浮上しています。
(長崎県・村ア利幸)

 「石木ダムは要りません」「強制収用しないで下さい」。地権者・支援者ら約20人は年末の23日、佐世保市内で石木ダム反対ののぼり旗を立てて、建設反対の宣伝・署名をしました。約2時間で土地の強制収用に反対する署名364人分が寄せられました。

 川棚町に隣接する波佐見町に住む女子中学生(13)は「石木に住んでいる人たちが、佐世保市民のために土地を取られるのはおかしい」と署名しました。

1世帯で30万円
 宣伝には、日本共産党の久保田和恵・川棚町議、山下千秋・佐世保市議も参加。久保田町議は「町民アンケートで『ふるさとはそのまま残してほしい』『ダムの必要性を再検討する話し合いをしてほしい』との要求が多数あった」と紹介しました。「河川改修をすれば、治水対策は可能と山口文夫川棚町長も認めている。ムダな公共事業はやめるべきです」と訴えました。

 山下市議は、過大な水需要予測を批判します。「大村市で給水制限があったときでも、佐世保市はビクともしなかった。現在、佐世保市全体のダムの貯水量は93%。利水も治水も必要ないダム」と訴え、「ダムができると、これから先、298億円の税負担を佐世保市民は強いられる。1世帯あたり約30万円もです」と市民に呼びかけました。

党県議のみ反対
 利水にも治水にも役立たないダム建設ですが、県議会で唯一反対を貫いているのは日本共産党の堀江ひとみ県議だけです。12月4日の一般質問で、堀江県議は「裁決申請手続きは、地権者の家と土地を取り上げる強制収用につながってくる。いまだに地権者は納得しておらず、本当に石木ダムは必要か。裁決申請はやめてほしい」と中村法道知事に詰め寄りました。中村知事は「石木ダムは必要不可欠な事業」と推進の姿勢を示しています。

 長崎県は13日、強制収用にむけ4世帯の家屋・土地と1世帯の土地の「測量・調査」を行うとしています。
 石木ダム事業 石木川に計画されている多目的ダム。堰堤(えんてい)高55・4メートル、総貯水量548万トン、総事業費約285億円。2016年度の完成予定とされています。13年9月6日、国は土地の強制収用を可能とする石木ダム事業認定を告示。現在、水没予定地には13世帯約60人が生活しており、1962年から半世紀にわたって反対運動が続いています。

 地権者の一人、岩下すみ子さん(66)は、佐世保市民に事実を知ってもらおうと、懸命に署名を呼びかけます。「必要でない水のために、ダムを造らないでほしい。過大な水需要評価を見直し、本当にダムが必要なのか再検討してください」と訴えています。

 佐世保市の「アルカス佐世保」で、18日午後1時30分から集会を開きます。参加者らは「石木ダム問題を考えるため、多くの人に集まってほしい」と佐世保市民に広く呼びかけています。