「しんぶん赤旗」2015/01/09
諫早開門全国の連帯で実現を
国の判決無視許さない
 有明海での漁業被害の原因とされる国営諫早湾干拓事業(長崎県)をめぐり、潮受け堤防排水門の開門を命じた裁判の確定判決で定めた開門期限(2013年12月20日)から1年を過ぎましたが、国・農林水産省はいまだに実施していません。早期開門をめざす「よみがえれ!有明訴訟」原告の漁民らは「宝の海を取り戻そう」、「国の判決無視は法秩序の崩壊を招く」として全国との連帯を強めています。

 「私の収入の半分以上は、県や市から引き受ける漁以外の仕事。多くの漁民は漁業だけでは生活が成り立たない状況です」。カキ養殖や定置網漁を営む小長井漁協(諫早市)理事の松永秀則さん(61)は有明海漁業の窮状を訴えました。

 有明海における漁獲量の減少は、1989年の干拓事業着工後に始まり、広大な干潟を消失させて「ギロチン」と呼ばれた97年4月の堤防閉め切りで深刻・広域化。大規模な赤潮の頻発などで二枚貝のアサリやタイラギは大量死し、栄養不足による色落ちでノリ単価が下落するなど、被害は今日も続いています。

"罰金"も払わず
 福岡高裁は、堤防閉め切りと漁業被害の「因果関係は肯定するのが相当」(2010年12月)と開門を命じ、国の控訴断念で判決が確定しました。断罪されても、国が確定判決を無視しているため、"罰金"にあたる制裁金も発生。開門をかたくなに拒む国は、制裁金にも異議を申し立てていますが、佐賀地裁は「堤防の閉め切りは違法であることを認めたもので原告(国)の主張は採用できない」(14年12月)と退けました。これに対し、国は最高裁まで争う姿勢を見せています。

 松永さんは「確定判決も守らず、精査金も払わなくていいと裁判者も言うはずがない。法治国家として許されないと、広く世論に訴える」と力を込めます。

自然復元したい
 昨年9月、国に開門を求め、街頭やインターネットなどで集める「全国署名」が始まり、1月2日時点で1万5450人分に到達。九州や関東、関西の各地から、個人や公害被害者団体、労働組合などが署名を寄せ、街頭でも「頑張ってください」と激励がありました。

 街頭で署名を呼び掛けている坂田輝行さん(67)は、有明訴訟を長く支援してきた諫早市民の1人です。県内で理科の高校教師を30年以上務めながら、堤防閉め切り後から諫早湾に足を運び、二枚貝のハイガイの死殻など「異変」の実態を見て、記録してきました。「21世紀は、壊された自然を復元していく時代です。子や孫の世代のためにも、この裁判は負けられない」。

 深刻な不漁が続く中、組合員が減少し、存続さえ危ぶまれる漁協もあります。「よみがえれ!有明訴訟」弁護団は、有明海の再生が"国民主権"のかかった問題だとして、「ただちに、漁業も農業も防災も成り立つ万全の開門準備工事に着手」するよう国に求めています。