「しんぶん赤旗」2014/08/09
石木ダム反対半世紀
川棚町 県は強硬姿勢
地権者ら決意強める
 長崎県と佐世保市が「佐世保市の利水」と「川棚川の治水」を名目に、川棚(かわたな)町・石木(いしき)川に建設を計画している石木ダム。県は地元地権者の反対を押し切って土地の強制収用に道を開く裁決申請手続き(申請期限9月8日)を進めています。ダム建設に反対する住民らは「利水も治水も効果のないダム」「美しい石木の自然を守れ」と建設阻止の構えを見せています。
(長崎県・村ア利幸)

 話し合いで解決してほしいとの地権者の気持ちを逆なでするかのごとく、県はダム建設につながる調査や工事を強行しています。7月25日と28日には、用地測量のための立ち入り調査を実施。7月30日以降では、水没する道路の替わりとなる付け替え道路工事に着工しようとしています。約80人もの地権者・支援者らの抗議で、測量は断念、付け替え道路工事の着工も工事現場入り口に陣取った地権者らによって阻止されています。

「ムダ」確信
 地権者の一人の石丸勇さん(65)は「必要のないダムということは、研究家を入れて学び合い確信を持っている。半世紀にわたるたたかい。反対を貫いていく」と決意を強めています。

 石木ダムの目的の一つである利水で、佐世保市は、実績とそぐわない過大な水需要予測を立てています。2017年度の水需要予測値を11万7000立方メートル/日として、安定水源水量としている同7万7000立方メートル/日のを引いた同4万立方メートル/日を市は石木ダムに求める必要水量としています。しかし、1999年度から減少傾向にあった水需要が、突然2014年度からV字型に回復しており、不自然な水需要予測に、支援者らは「石木ダムに必要な同4万立方メートル/日に合うよう、数字を作り上げているのではないか」と口々に語っています。

 また、「不安定水源」とされている水源も、常時同1万5000立方メートル/日以上使用されており、実際の水源は同9万2000立方メートル/日以上あることになります。現状でも、水不足になることはありません。

 もう一つの目的である治水では、石木ダムは、川棚川下流部に合流する石木川に造るダムであり、支川である石木川の氾濫や堤防の内側の内水(ないすい)氾濫を防ぐことはできません。それどころか、本来必要な川棚川の治水対策を県や町がやっていない現状が明らかになっています。

 石木ダムに反対する佐世保市民などでつくる「石木川まもり隊」の松本美智恵さんは、7月11日の県との集団面談で明らかになったことを語ります。「一つは、河川改修だけでも洪水は防げること。山口文夫川棚町長も認めています。二つ目は、1994年の渇水のときの資料が不足し、検証しようがないため、ダム建設の理由にはならないことです」

 渇水時の苦しい経験をした佐世保市民の市民感情を逆手に取り、ダム建設の大きな理由にしようとする県・市のやり方に憤ります。「ムダな道路工事に税金を使わないで、豊かな自然を守ってほしい」と支援者らの気持ちを代弁します。

共産党一貫
 日本共産党は一貫してダム建設に反対してきており、堀江ひとみ県議、山下千秋・佐世保市議、久保田和恵・川棚町議をはじめとする日本共産党議員は、阻止行動に参加しています。山下氏は「地権者一人ひとりの基本的人権を奪い去ろうとしている」と阻止行動の度に現場でマイクを握って県の行いを糾弾しています。党県委員会は1日、県のダム建設ありきの姿勢を改めるよう、抗議と付け替え道路工事中止を求めて県に対し、申し入れています。

 地権者の一人の岩下和雄さん(67)は7月30日、工事を阻止した際に「県は私たちと話をしたか。なぜ、私たちの言うことを聞かない。もっと話し合いをすべきだ」と訴えました。話し合いでの解決を求める住民との面談もなおざりの県の手法と、諫早湾干拓問題で確定判決を無視しながら石木ダムでは法律を盾に強制収用しようとする県の態度に、県民から「二枚舌」との批判が強まっています。


石木ダム事業 石木川に計画されている多目的ダム。堰堤高55・4メートル、総貯水量548万トン、総事業費約285億円。2016年度の完成予定とされています。昨年9月6日、国は、土地の強制収用を可能とする石木ダム事業認定を告示。現在、水没予定地には13世帯約60人が生活しており、1962年の県の無断の現地調査・測量以降、半世紀にわたって反対運動が続いています。