「しんぶん赤旗」2014/06/20
危険な病原体お断り
長崎大学 住宅街に実験施設建設計画
近隣住民「ノー」の声 署名に集め提出
 長崎大学が「エボラ出血熱」などを引き起こす最も危険なウイルスを取り扱う研究施設を長崎市の住宅街に建設しようとしている問題で、住民から反対の声が高まっています。施設建設に反対する署名には、約3カ月半で1784人分(18日現在)が寄せられ、長崎大学に提出しました。
(長崎県・村ア利幸)

 施設は、アフリカや南米などから死亡率が高く治療法も確立していない第一種病原体(ウイルス)を持ち込んで研究する「BSL―4(バイオセーフティレベル4)」施設。その実験施設を長崎大学は約2万人が暮らす市内の坂本地区に建設する計画です。

完全に防げない
 2012年4月に施設の候補地を発表し、約50億円〜100億円の建設費用を見込んでいます。建物はコンクリートで二重に密閉、実験室の排気もフィルターで99・97%の病原体を除去可能としています。

 しかし、病原体は微小なため、フィルターでも外部への病原体の漏出を完全に防げないことが、わかっています。また、針刺し事故やフィルターが外れるなど、外国でのウイルス漏出の事例も報告されています。地元紙の報道(「長崎新聞」13年12月5日付)で「人為的なミスで病原体が流出することはゼロとは言えない」と大学側も危険性を認めていることが明らかとなっています。

 BSL―4施設は、国立感染症研究所村山分室(東京都武蔵村山市)と理化学研究所筑波研究所(茨城県つくば市)の2カ所につくられましたが、いずれも住民や行政の反対の声により、病原体の持ち込みは許していません。

学内の取材拒否
 「くらしと地域を考える長崎市民の会」(吉田省三代表委員・長崎大学経済学部教授)と「BSL―4に反対する周辺住民の会」(下田豊代表)は2日、長崎大学の片峰茂学長にBSL―4建設計画の撤回などを求めて申し入れ。「人口密集地に実験施設をつくることは、住民の命を危険にさらすだけでなく、観光都市・長崎の存亡にもかかわる」と指摘していました。しかし、市民の関心が高い問題にもかかわらず、2日の申し入れと18日の署名提出では、大学側は、学内でのマスコミ取材を拒絶しました。

 二つの団体は、4日には、長崎市の企画財政部都市経営室に申し入れし、実験施設を人口密集地につくる危険性について実例を挙げて紹介しました。特に、日本にわざわざ持ち込むことの危険性を強調。市は「市民の安全性と理解を第一に前提条件と考えている。現時点では賛成・反対の意見を隔たりなくいただきたい」と話しました。