「しんぶん赤旗」2013/08/25
戦争遺跡を訪ねて
長崎市・立山防空壕
原爆「被害軽微」と誤報
 長崎市立山は坂と階段が多い、斜面地に位置する町です。その坂の上り口の公園内に、長崎県防空本部跡(立山防空壕)があります。

 防空本部は戦時中、空襲警報が発令されると、県知事ら要員が集合し、警備や救援・救護など各種応急対応の指揮、連絡手配に当たっていた場所です。県の防空施策の中心的役割を担うところで、壕内には知事室や警察部長室、防空監視隊本部が設置されていました。


爆心から2・7キロ
 1945年8月9日の原爆投下直後、県知事は防空本部におり、その証言が残っています。壕内に記された証言では、「ピカッと光って大きな爆音が聞こえ、広島の新型爆弾らしいものが落ちたが、管内の被害は軽微、人畜に死傷はなく、全壊家屋もない」とあり、「しかし、よく考えてみると、それはその筈であった。警察電話が通じ、すぐ報告できるような警察署からの第一報が、被害軽微、人畜に死傷なしとしてくるのは、もとより当然のことであった」と続いています。壕は爆心地から約2・7キロ地点に位置し、爆心地の状況を即時に把握できませんでした。初めは被害軽微としていましたが、徐々に爆心地周辺の浦上地区一帯の詳細な情報が入ってくるにつれて、甚大な被害状況を国の防空総本部長官などに送ったとされています。


05年から公開
 2005年11月から見学できるように整備され、被爆の実相や平和の大切さが感じられる戦争遺跡となっています。長崎の青年による平和活動団体・P―NATS(ピーナッツ)の男性(32)=長崎市在住=は3月に壕を初めて訪れました。「戦時中の混乱した状況が感じられました。こんな近くに被爆遺構があったとは驚きです」と話しました。
(長崎県・村ア利幸)