「しんぶん赤旗」2013/05/17
ひと
初の海外公演をした「平和の旅へ」合唱団団長

小笠原 一弘さん(73)
 「平和の旅へ」は、長崎原爆で半身不随の重傷を負いながら、車いすで原爆語り部の活動を続けた渡辺千恵子さん(1928―93年)の半生を合唱で表現した組曲です。核兵器廃絶の願いを歌声で広げようと被爆40年の85年、長崎でその名を冠した合唱団活動を始め、95年から初代団長です。

 4月に初の海外公演を35人がニュージーランドで行いました。日本語の歌詞を英訳した字幕を付けて披露。会場では「長崎でこんなことがあったんだよ。核戦争が起こったら大変だ」との感想が寄せられ、涙を流す人も。自分から核兵器廃絶の署名をした子どもが「お母さん、署名したの? しないとだめだよ」と話すなどの反響を呼びました。

 佐賀県錦江村(現在の白石町)で農家の三男坊として育ち、15歳で長崎三菱重工の技術学校に入学。60年代、折からの安保闘争や労働運動に引き込まれました。

 同期入社の労働者がブロックの下敷きとなって亡くなるなど、相次いだ労災に「働く仲間を守らなければ」と職場環境改善の運動に取り組む傍ら、長崎西高校通信制で高卒の資格を取得した努力の人です。

 歌との出合いは50歳のとき。職場のうたごえ運動・ながせん合唱団でした。合唱には「歌の持つ平和の力、励ます力、たたかっている人たちと連帯する力がある」と信じます。

 「伝え方はさまざま。思いに響くよう、音楽を通して平和の思いをつないでいきたい」と夢を語ります。
 文・写真 村ア 利幸