「しんぶん赤旗」2013/01/22
ひと
映画「ペコロスの母に会いに行く」原作者でライター
岡野 雄一さん(63)
 長崎県島原市出身の森崎東監督がメガホンをとる、「ペコロスの母に会いに行く」は今年夏の公開をめざし製作が進んでいます。主演は長崎県川棚町出身の俳優・岩松了さん。長崎の港や商店街がふんだんに登場する予定だけに、田上富久市長をはじめ応援の輪が広がっています。

 原作は500部の自費出版。柔らかいタッチの絵の8コマ漫画です。グループホームに入所中の認知症の母との交流をユーモラスに描き、ネットで話題になってベストセラーになりました。「ペコロス」は小玉ねぎのこと。自らの頭頂部の寂しさと重ねます。

 長崎市に生まれ、酒に溺れながらもやさしい父と自分を温かく見守る母のもと、坂の街ならではの斜面地で育ちました。大学受験に失敗後、長崎の土地柄や地元特有の人付き合いの狭さが嫌になり上京し、ライターの道へ。しかし、長崎の谷あいの街が懐かしくなり、故郷に舞い戻りました。

 89歳の母とのやりとりは日常の何気ない行き違いが面白く、毎日が発見です。長崎弁で「どんげんでんなる(何とかなる)」が口癖。趣味のギターは長崎弁で弾き語りをします。

 東日本大震災の被災のすさまじさに、ショックで描けない時期がありました。知人に「介護のノウハウを描いた漫画じゃない。自信を持て」と言われたのが誇りとなっています。思うままに母や家族のことを描き尽くす。描き続けることが夢です。
 文・写真 村ア 利幸