「しんぶん赤旗」2012/08/09
発言2012
ふるさとを残したい
石木ダム建設絶対反対同盟代表 岩下和雄さん

 石木(いしき)ダムは、長崎県と佐世保市が東彼杵(ひがしそのぎ)郡川棚(かわたな)町の川棚川の支流・石木川に当初は水不足対策、最近では洪水対策を理由に285億円をかけて建設する計画です。約50年前に県が地元に無断で測量調査を行ったことから問題が続いています。

 私たちは1974年に「石木ダム建設絶対反対同盟」をつくり、反対運動を始めました。県の工作や同盟の分裂がありましたが、そのたびに団結してたたかい、現在も地元に住む13世帯40人が反対を続けています。82年には県が機動隊を導入して強制測量を強行し、住民に多くの負傷者が出ましたが、私たちの抵抗と県民の反対で中断に追い込みました。

 石木ダムは必要ないと思っています。県は石木ダム建設を推進する理由について、佐世保市の人口増加による将来的な市の水不足解決のためとしています。しかし、佐世保市は60年の26万人をピークに人口が減り、市町村合併による人口増を加えても、現在約25万人です。

 市の一日7万7000トンの水需要設定に対し、使用量は7万トンを切っています。30年後には27%の人口減で約19万人と推定されていますので、当然水使用量は減少します。ダムを造る必要はなくなっているのですが、私たちがいくら訴えても無視しています。それどころか、計画当初では「補助金目的のため」と説明していた治水面を建設理由に付け加えています。

 私たちがダム建設に反対する一番の理由は「このふるさとを残さなければならない」からです。ホタルが飛び交う清流、石木川の豊かな自然環境で子どもたちを育てて引き継ぐのが使命だと思っています。

 2009年、県が国に事業認定を申請しましたが、「コンクリートから人へ」の公約を掲げた民主党政権のもと、ダム建設が妥当かどうか検証する場が設けられました。公正な検証を期待しましたが、ダム建設ありきで住民の声を無視し、事業継続を認定しました。政権交代で長年の問題解決に期待しましたが、期待外れでした。公約も実行されず、失望しました。ダムだけでなく長崎「新幹線」や高速道路など、ムダな大型開発が軒並み復活しています。

 石木ダム建設をめぐって「ダムが本当に必要かどうか」から話し合うことが大切なはずなのに、県は補償交渉に持ち込もうとするばかりで話し合いは応じられません。10年、20年経とうとも、私たちはずっとたたかっていきます。

 聞き手・写真 長崎県・村ア利幸