「しんぶん赤旗」2012/07/13
長崎市・神浦ダムの汚染問題
赤潮発生も市「問題ない」
専門家“抜本的浄化を”
 長崎市の水道水の4割を供給している神浦(こうのうら)ダムは、水汚染問題が長く指摘されてきました。約2キロ上流の三方山(さんぽうざん、412メートル)に民間会社・長崎三共有機の三方山廃棄物処分場(松崎町)があり、1975年の操業開始以来の不法投棄が原因と見られる水銀などを含む下水汚泥や焼却灰によって神浦ダムで淡水赤潮が発生しているからです。長崎市は問題ないとしていますが、専門家は抜本的な浄化対策の必要性を訴えています。(長崎県・村ア利幸)


 神浦ダムの水質について長崎市は「パイロットプラント(水処理施設)で水銀等の有害物質は環境基準値以下にしている。飲料水として問題ない」の立場です。

過去に改ざん
 市の説明が説得力を欠くのには理由があります。97年に市が三方山廃棄物処分場周辺から採取した地下水の総水銀値が環境基準値を3倍から5倍上回っていたにもかかわらず、市はそのデータを基準値内に改ざんして発表したことがあったからです。98年の処分場周辺の土壌調査では三方山地域の自然土壌中1キロ当たりの総水銀量0・06〜0・08ミリグラムを大きく上回る同2・42ミリグラムの水銀量を検出しています。

 三方山廃棄物処分場をめぐっては、長崎市民がダムの水が汚染されるとして市や長崎三共有機を相手取り01年1月に操業禁止などを求める裁判を起こしています。08年3月に成立した和解では三方山廃棄物処分場と周辺の環境保全、良好な水道水源の維持を図るとして学識経験者や原告・被告双方の代表でつくる「三方山水源環境保全委員会」が同年5月に設置され16回の審議を重ねてきました。委員会前委員長の中村剛氏(前長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科教授)は6月24日、神浦ダムのある地元・外海地区で初めて委員会としての報告をしました。

市民が声上げ
 中村氏は神浦ダムの水質について「長崎市のいうパイロットプラントの処理は全体の4%の水にすぎず、保証にはならない」と指摘。「子や孫の世代に影響が出るのが環境汚染の特徴。将来の問題を考えるなら市民一人ひとりが声を上げて、市に処分場撤去を求める必要がある」と踏み込んだ見解を示しました。

 外海地区は、これまで神浦ダムとは異なる水源で水道を利用してきましたが、神浦ダムの水の送水が予定されています。

 講演を聞いた男性(67)は「現在、別の水源があるため、地元の問題意識が薄い。地域をあげて取り組む必要がある」と話しました。

 三方山水源環境保全委員会は問題解決に向けた提言を来年春にまとめる方針を打ち出しています。