「しんぶん赤旗」2012/06/02
ひと
「被爆体験者」を撮り続ける写真家
黒アリ生さん(77)

 「人間の“いのち”」をテーマに被爆者を撮り続けてきました。6月1日から東京都美術館で開かれる公募写真展「視点」展(9日まで)に「『被爆体験者』は被爆者だ!」が入選しました。37回の「視点」展に入選17回。うち8回は被爆者の写真ですが、今回の作品は特別だと言います。

 「被爆体験者」は、被爆者とは認められないため、被爆者健康手帳が交付されず、医療費の補助が制限されている人々です。国から被爆者でないと差別されているのです。

 国は、爆心地から半径約[キロの同心円の中を「原爆被爆地域」として指定。等距離または近距離であっても、当時の長崎市の行政区に所属しない地域は被爆地域から除外しました。その行政区域外の被爆者を、国は「被爆体験者」と呼んでいます。「私の幼なじみも、一方は被爆者、もう一方は違う、といったおかしなことが起こっています」と話します。

 1935年に長崎県平戸市に生まれました。5歳で中国・大連にわたり、10歳で戦争が終結。戦後の混乱から日本に引き揚げたのは12歳。

 銀行勤めの傍らで67年から45年間、被爆者の撮影を続けています。「写真が社会に無関心になってはいけない」が信条です。

 「福島原発事故では内部被ばくが懸念されています。『被爆体験者』も内部被ばくです。過去の問題ではない。被爆者のいまを伝えなければ」とレンズを向けます。

 文・写真 村ア 利幸