「しんぶん赤旗」2012/05/23
長崎新幹線
住民置き去り着工超特急
県民の会ムダな事業やめよ
28分短縮のため5000億円 FGTは安全性未確立

 民主党野田政権が今年度から着工を決めた長崎「新幹線」諫早〜長崎ルート。実用化のめどさえ立っていないフリーゲージトレイン(FGT=軌間可変電車)の導入が前提で、ムダ遣いの象徴となっています。(長崎県・村ア利幸)

 整備新幹線西九州(長崎)ルートとして2008年3月26日に認可された武雄〜諫早間(約45キロ)は建設費2900億円。10年7月の世論調査で長崎県65・8%、佐賀県66・5%が「新幹線不要」(「西日本」7月7日付)と答えています。建設予定地の地権者も反対するなど、長崎「新幹線」は住民に歓迎されていません。果たして完成できるのか、採算はどうか、どちらも疑問符だらけだからです。


脱線の危険も
 長崎「新幹線」の特徴はFGTの採用です。FGTは、車輪の間隔をレールの幅に合わせて自在に変え、レールの間隔が異なる新幹線から在来線に乗り入れできるとされます。しかし、いまだ実用化されていない未完の技術。最も大事な安全性の問題がクリアできず、高速走行では脱線・転覆の危険があるからです。

 武雄〜長崎間で5000億円もかかる建設費もネックです。巨額の税金をつぎ込んでの時間短縮効果は28分しかありません。長崎県の示す数字も問題です。宣伝物には「新幹線の利用者は『かもめ(特急)』の約2・8倍」「費用対効果は約2・2倍」とあります。人口増が期待できないのに新幹線の利用者が2倍以上に跳ね上がるとする需要予測は明らかに過大。費用対効果について国は「1・1倍」としています。長崎「新幹線」の建設中止を求める県民の会が根拠をただしましたが、県の回答はありません。


暮らしに使え
 国は本年度の整備新幹線整備事業費に約3095億円を計上、西九州ルートには約220億円を注ぎ込みます。07年度から西九州ルートには事業費約544億1600万円が使われ、さらに多くの税金が使われることになります。

 県は本年度予算に関連事業約46億5238万円を計上しています。長崎駅周辺では「新幹線」を口実に県庁舎移転など大規模な再開発を推し進めています。
 「県民の会」の深町孝郎事務局次長は「国・県の財政が借金漬けの現状にあって時間短縮や経済効果も少ない名ばかりの『新幹線』は税金のムダ遣いです。県民の多数が望んでいない長崎『新幹線』建設はただちに中止し、税金は暮らしや福祉、そして大震災からの復興にこそ使うべきです」と話しています。



 フリーゲージトレイン
 車輪の間隔をレールの幅に合わせて自在に変えられる新型列車計画。日本では、新幹線の標準軌(1435ミリ)、在来線の狭軌(1067ミリ)と異なる線路幅があるため、新幹線と在来線をつなぐ整備新幹線西九州(長崎)ルートで導入を前提に建設計画を進めてきましたが、開発着手から十数年を経た現在も、実用化のめどは立っていません。