「しんぶん赤旗」2012/02/12
長崎・諫早干拓優良営農地入植
 親族企業優遇の疑惑
 前知事・自民議員関与か

       長崎県議会百条委員会に新たな物証

 長崎県議会百条委員会は、諫早湾干拓事業の優良営農地に自民党の金子原二郎参院議員(前知事)・谷川弥一衆院議員の親族企業「T・G・F」が入植できた経緯について調査を続けています。関係者に証言を求めて10回の委員会を重ね、不正入植の事実が明らかになりました。
(長崎県・村ア利幸)


 T・G・Fは、谷川議員の長男・喜一氏が代表取締役、その妻で金子前知事の長女・富貴氏が取締役を務めていた農業生産法人です。法人設立は2007年1月で、農業に従事したことのない企業ではないかと当初から指摘されていました。しかし、入植企業に選ばれた事実が発覚すると、「入植目的で設立した企業ではないか」との批判を浴び、親族は08年3月に役員を辞任。同年4月に全干拓農地の5%に当たる約32ヘクタールの農地に入植しました。
 入植選考について、当時の県農業振興公社の職員8人が選考委員会の事務局を務め、入植者評価の実質的権限を持っていたことが明らかになりました。審査すべきはずの選考委員会は「事務局の評価を追認するだけだった」と昨年11月の第4回百条委員会で証言しています。入植者調査は事務局が行い、T・G・Fの現地調査担当者が独断で採点を上方修正したことなどが分かっています。
 08年5月に、日本共産党の仁比聡平参院議員(当時)が、国会で「T・G・Fは干拓農地入植の資格要件を満たしていないのではないか」と指摘していました。


 農業従事なし
 入植は農業生産法人であることが条件で、法人の資格は、役員の一定数が法人の農作業に60日以上従事していることとされています。しかし、谷川前代表は「1日も農作業に従事したことはない」と1月10日の証人尋問で証言。「農業生産法人の事業報告書で架空の農作業日数を記載し、他の役員も規定日数を満たしていなかった」と認めています。
 虚偽申請を行っていたT・G・Fは、仁比氏の指摘通り、そもそも入植資格がなかったことになります。


 面談の記録が
 T・G・Fは、入植選考時の谷川議員の関与を否定していますが、1月23日の第9回百条委には新たな物証が示されました。農業生産法人設立相談窓口の一つ長崎農業改良普及センターに、T・G・F設立の半年も前の06年7月に「谷川会長」と記述された面談記録があり、谷川議員が法人設立に関与していた疑いが強まっています。日本共産党の堀江ひとみ県議は「T・G・Fは谷川議員が会長を務めていた谷川建設の一部門」と指摘します。
 谷川議員が入植選考時に事務局に便宜をはかるよう促した疑いも浮上しており、前知事と県議5期を務めた自民衆院議員の関与に対する今後の調査に県民の注目が集まっています。

 国営諫早湾干拓事業
 農林水産省が「防災機能の強化」「優良農地の確保」を理由に1989年に着工。国・長崎県が2533億円を投じ、事業費は1ヘクタール当たり3億7700万円にも上ります。諫早湾を長さ約7キロの潮受け堤防で閉め切った際は「ギロチン」といわれ、1550ヘクタールの干潟が失われました。干拓営農地には、県農業振興公社の公募と選考委員会での選考の結果、2008年に42の農業生産法人が入植、バレイショや玉ネギを栽培しています。