「しんぶん赤旗」2011/9/25
国は諫早全開門せよ 
有明海訴訟 原告ら農水副大臣と協議

 国営諫早湾干拓事業で設置された潮受け堤防開門を求めている「よみがえれ!有明」訴訟の原告・弁護団は24日、開門を命じた福岡高裁の履行に向けた国との協議を福岡市内で行いました。

 原告・弁護団からは、漁民や馬奈木昭雄弁護団長らが、国からは筒井信隆農水副大臣らが出席しました。

 協議の冒頭、筒井副大臣が堤防内側の調整池の水位をマイナス1・2メートルから0メートルに制限する国の方針について説明。代替水源とする地下水の確保へ向けた調査について、「年度がかわる前にやりたい」と述べました。

 馬奈木氏は「来年5月までの開門は可能だ」と指摘し、「判決主文の言う『開放』は全開門だ。国のやり方では判決に沿わない」と批判。筒井副大臣は「原告は、判決以上のことを国に求めるべきではない。3年以内に開ければ判決を履行したことになる」と述べました。

 漁民原告の中田猶喜さん(61)=長崎県島原市=は「国には、有明海を再生しようとする姿勢が見られない。『一日も早く再生を』という私たちの気持ちに応えてほしい」と訴えました。

 協議後の記者会見で馬奈木氏は筒井副大臣の発言を「裁判所を侮辱する、アウトロー(無法者)の主張だ」と批判。「国の態度が変わらなければ、本意ではないが強制執行を申し立てることになる」と述べました。


制限開門説明を  佐賀知事

 佐賀県の古川康知事は23日、鹿野道彦農林水産相が国営諫早湾干拓事業の開門調査を「制限開門」で実施する意向を表明したことについて、「本県が求める有明海の環境変化の原因究明につながるのか、説明を求める」とのべました。

 同県は農水省に対し、調査を「全開門」で実施するよう求めており、古川知事は「制限開門では原因究明は難しい」との認識を示しています。

 鹿野農水相が示した手法は調整池の水位の変動幅を20センチ以内とするもので、同省が6月に公表した環境アセス素案・4案の一つです。

 同日、長崎県諫早市で鹿野農水相と会談した長崎県の中村法道知事は、「開門の目的、必要性がまったく理解できない」とのべ、調査自体に反対する考えを改めて強調しました。

 「よみがえれ!有明訴訟」弁護団は環境アセス公表以前から、「環境アセスそのものが不要。段階的開門以外の開門案は認められない」との見解を示しており、「段階的開門」を求め続けています。