「しんぶん赤旗」2011/6/28
有明海訴訟 開門認めぬ不当判決
 ”高裁判決ゆるがない”原告新たなたたかい決意

 国営諫早湾干拓事業(長崎県諫早市)で設置された潮受け堤防排水門の開門を求めた「よみがえれ!有明海」裁判の小長井・大浦訴訟で27日、長崎地裁(須田啓之裁判長)は開門請求を棄却する不当判決を出しました。原告団・弁護団は、控訴する方針です。

  須田裁判長は、堤防閉め切りと諫早湾無いでのアサリ養殖業の漁場環境悪化やタイラギ(二枚貝の一種)の漁獲量減少の因果関係を否定。湾内の小長井漁協(諫早市)の漁民が受けた被害も「漁業補償契約に基づく漁業行使権の一部放棄及び制限の範囲を超える侵害をもたらすものであったかどうかは明らかではない」とし、事業の公共性を理由に「開門請求は認められない」としました。

 一方、佐賀県有明海漁協大浦支所(佐賀県太良町)の原告15人には、補償を上回る被害があったとして国に損害賠償を命じました。
 副団長の平方宣清さん=佐賀県有明海漁協大浦支所=は「漁業被害があるのに開門請求が認められないのは納得できません。開門こそ有明海の本当の再生につながります。開門の実現までたたかい続けます」と語りました。

 弁護団長の馬奈木昭雄弁護士は「不当極まりない判決で、強い憤りをもって受け止めている。この判決をもってしても開門を命じた福岡高裁判決(昨年12月確定)は揺るがない。広範な世論を広げ一日も早い開門実現を勝ち取りたい」と述べました。


「非常識な判決」
 報告集会で批判続出

 国営諫早湾干拓事業(長崎県諌早市)の潮受け堤防の開門を求める「よみがえれ!有明訴訟」で27日、漁民の開門の願いに背を向けた長崎地裁判決には、閉廷後の原告側集会で批判が相次ぎました。

 馬奈木昭雄弁護団長は、開門を認めず、大浦漁協の損害賠償請求は認める一方、小長井漁協には認めないという判決について「非常識な判決」と批判しました。「開門訴訟は漁民の利益だけでなく、開門によって有明地域をよみがえらせるためのたたかい」として、開門は農業者の利益でもあることを強調しました。

 原告団長の松永秀則さん(小長井漁協理事)は「残念な判決。悔しくてならない」と語りました。副団長の平方宣清さんは「漁業者の声よりも行政の声を聞くのかと、漁民の状況を理解しない判決に憤りを感じています」と怒りをあらわにしました。


事態混乱させるだけ 判決受け弁護団が声明

「よみがえれ!有明訴訟」弁護団は27日、小長井・大浦訴訟での長崎地裁による開門請求棄却の不当判決を受け声明を発表しました。

 声明は地裁判決を「いたずらに事態を混乱させるだけの不当判決」と批判。一方、確定した福岡高裁判決によって開門が国の義務となっており「今回の不当判決によって、国の開門義務が消え去るものではない」と指摘しています。

 巨額の対策工事費を示す一方で工期を明らかにしない「アセス素案」を提示するなどした国のこれまでの対応を強く批判するとともに、国に対し、苦境に陥っている漁民の悲惨な現実に正面から向き合い、開門協議に誠実に応じるよう求めています。



 諫早湾干拓事業と開門請求訴訟 国営諫早湾干拓事業は、「防災機能の強化」「優良農地の造成」を目的に1986年に着工。工事中から漁業被害が起き、潮受け堤防の閉め切り(97年)以降、ノリの大凶作など「有明海異変」と呼ばれる大規模な漁業被害が発生しています。2002年に佐賀県などの有明海漁民が開門を求め提訴。

 一審佐賀地裁(08年6月)は開門命令。福岡高裁(10年12月)も国の控訴を棄却し、国の開門義務が確定しています。