「しんぶん赤旗」2010/8/6
核なき世界 実現できる 
国連総長 長崎から発信

 原爆投下65周年に合わせて来日中の潘基文(パンギムン)国連事務総長は5日、被爆地の長崎市を訪問しました。国連事務総長が長崎市を訪ねるのは初めてです。

 潘氏は正午すぎ、爆心地前で、「世界に向けた平和のメッセージ」を発表し、「強い確信と信念を持って立ち向かえば、核兵器のない世界を実現できる」と訴えました。

 潘氏はこれに先立ち夫人とともに献花。数秒間黙とうした後、深く一礼しました。
 メッセージのなかで潘氏は、長崎訪問について「並々ならぬ苦難を耐え抜いてきた皆さんに敬意を表明したい」「この地を訪ね核兵器は非合法化されねばならないという確信を深めた」と述べました。

 そして、「すべての国が核兵器廃絶への私の5項目提案を支持し、核兵器条約の交渉について一日も早く合意するよう呼びかける」と訴えました。 潘氏はメッセージ発表後、午後には、原爆で破壊された頭部だけが残った「被爆マリア像」のある浦上天主堂を訪れました。

 潘氏は長崎市訪問に続いて、広島市を訪れ、6日午前に開かれる「原爆死没者慰霊式・平和記念式」(平和祈念式典)に現職の国連トップとして初出席します。

 国連事務総長の5項目提案   潘基文事務総長が2008年10月、ニューヨークでの講演のなかで発表した核兵器廃絶への具体的な道筋を示したもの。核不拡散条約(NPT)に加盟する核保有国を含む全締約国が核軍縮交渉に取り組むことなどを提起しています。


核廃絶に努力したい
  
国連総長、被爆者と面談  長崎

 来日中の潘基文(パンギムン)国連事務総長は5日、長崎市平野町の長崎原爆資料館を訪れ、館内で長崎原爆被災者協議会の谷口稜曄会長(81)ら6人の被爆者と面談し、それぞれの被爆体験や平和への思いに耳を傾けました。

 谷口会長ら出席者によると、潘事務総長は「皆さんとともに核廃絶に努力したい」と力強く明言しました。

 被爆地の様子やその後の苦しみを語った長崎原爆遺族会の下平作江さん(75)は「真剣に話を聞いている様子が伝わってきた。今回の訪問で、被爆地の実相がある程度は分かったと思う。核廃絶に実力を発揮してほしい」と期待感を示しました。

 面談に先立ち、潘事務総長は資料館の展示を視察。背中一面に熱傷を負った当時16歳の谷口会長の写真の前で会長と話を交わしました。健康状態について聞かれた会長は「今も背中から汗が出ず手術を繰り返している」と説明しました。