「しんぶん赤旗」2010/2/2
不合理告発 改善こそ 
被爆地域指定範囲 長崎市で報告会


 長崎被爆地域拡大協議会(峰松巳会長)は、1月30日長崎市内で、同会が昨年12月中旬におこなった厚労省交渉報告会と沢田昭二名古屋大学名誉教授を招いての講演会を開き、百十名の市民が参加しました。

厚労省交渉に参加した河野左郷さんは、「爆心地から十二キロメートルの長与町は被爆地域で、十一・五キロメートルの伊王島で被爆した私は,被爆者と認められない。その科学的根拠を厚労省担当者に問い詰めたが、回答はなかった。いくつもの病名を抱えており、早く被爆者手帳が交付されるようがんばりたい」と訴えました。

 生後十九日目に爆心地から十二キロメートルの香焼町で被爆した津村はるみさんは、「原爆の爆風で寝かされていた座布団ごと縁側に吹き飛ばされ、健康が心配だといつも母から聞かされていた。甲状腺腫を手術し、医師から治癒と診断が出たが、これから生涯つづける甲状腺機能低下は『医療受給者証』の対象外となっているのは、納得できない。がんを対象にするよう訴えたが、厚労省は現状では困難との回答だった」と報告しました。

 広島の被爆者でもある沢田昭二・名古屋大学名誉教授は「被爆実態に基づく放射性降下物による被曝の研究」と題し講演。

 「原爆投下直後に雲仙岳測候所からスケッチされた原子雲をみれば、南側は、爆心地から約20キロメートルの野母崎までのび、北は、大村市の上空まで広がっている。原子雲の広がった広い範囲に放射性降下物が充満し、一ミクロン以下の微粒子は、呼吸で吸い込み、鼻毛にも引っかからないで、肺の奧まで入り、内部被爆の原因となる」と説明。

 また、長崎市と県が2000年に発表した「被爆未指定地域証言調査報告書」には、「『毛が抜けた』『歯茎から血が出た』『皮膚に斑点が出た』との急性症状の訴えがあり、これは原爆放射線被曝以外には、考えられない」と指摘し、「少なくとも爆心地から半径12キロメートル以内で被爆した住民に被爆者健康手帳を交付するのは当然だ」と強調しました。


 参加者からは、「原爆被害の科学的根拠を国はなぜ、無視してきたのか。講演会を力にして運動をもっと強めよう」との意見が出されました。