しんぶん赤旗」2009/2/20
新市立病院 現在地で建て替え 
長崎市長 県の統合案退ける

 長崎県が、長崎市に新市立病院と日赤長崎原爆病院の統合を求めた問題で、長崎市の田上富久市長は十六日、県案を退け、市の計画案を採用することを決定しました。市議会各派代表者会議で明らかにしたもので、同日、金子知事にその意向を伝えました。

 日本共産党の津村国弘市議によれば、市長は、新市立病院建設検討プロジェクトチームの報告を受け、▽JR貨物との用地取得交渉の困難性▽日赤原爆病院を指定管理者とすることの是非▽原爆病院をなくすことへ市民の了解がないなどの理由を挙げ、県案では二〇一三年度の開院に間に合わないと説明しています。

 市は、長年の検討を経て、市立市民病院と成人病センターを統合し、新市立病院として現市民病院所在地に建設することを二〇〇六年決定。隣接地の用地取得など計画を進めていました。
 市は、新病院について地方独立行政法人化を検討しており、自治体病院としての役割を果たせるのか疑問の声も上がっていました。

 昨年十一月、県は「高機能病院」を名目に、新市立病院と原爆病院を統合し、長崎駅裏に移転させる案を突然、長崎市に提案しました。県案の新病院は六百床。現在の三病院のベッド数から一気に三百五十床も削減し、経営も日赤原爆病院を指定管理者とするものです。

 これに対し、住民、被爆者から反対の声が上がりました。
 市南部地域の自治会長が連名で現地建て替えなどを求める要望書を市に提出。被爆者五団体も、「原爆病院は原爆を三度許さない決意」を示すものだとして廃止に強い反対を表明しました。
 「くらしと地域を考える長崎市民の会」は、県案は医療費抑制とベッド削減が目的であり、地域医療の崩壊を招くものだとして統合案を撤回するよう県に申し入れを行いました。

 市は県案を受け、「救急・高度医療」の充実をめざし、救命救急センターの設置や従来の市案より五十六床増の五百六床とする見直し案を発表しました。

 「市民の会」の吉田省三代表委員は、「市長の決定は、地域医療の充実を求める市民や被爆者の要望に答えるものであり、歓迎する。効率性を優先する地域医療のリストラ計画を中断させたことは重要」と評価しつつ、市の独立行政法人化など問題点も指摘しました。

 津村市議は、「自治体病院として市民の声が届く運営、地域医療の充実のために提言、提案していきたい」と語りました