2007年4月19日(木)「しんぶん赤旗」

長崎市長銃撃

断て 暴力団の行政介入


 「平和な観光都市であるはずの長崎市で、なぜ二代続けて現職市長への銃撃なのか」―。故伊藤一長市長への哀悼とともに、市民だれもが疑問を感じています。

 本島等・前市長が一九九〇年一月に右翼団体「正気塾」の銃弾を受け、重傷を負いました。その際、右翼幹部は動機について「天皇に戦争責任はあると思う」との本島氏の発言をあげていました。

 何が動機なのか―。今回の犯行の動機の一つに四年前、容疑者と市側との間に起きた交通事故のトラブルがあげられています。

 前回の銃撃事件当時、市役所従業員組合委員長だった柴田勇輝氏(63)は、「単純な個人的うらみだけで片付けられるとすればあまりに拙速。もっと深い背景があるのではないか、徹底した真相究明が求められる」といいます。

 宮崎県の官製談合事件で明るみに出たのは、公共事業をめぐる行政と業者の癒着に介在するブローカーの存在という構図でした。

 公共事業問題に詳しいある専門家は、他都市と長崎を比較して、次のように語ります。「県内の公共事業の特徴は、港湾や堤防など海にかかわる大型公共事業が毎年数百億円規模にのぼること」「暴力団や右翼団体が行政と特定業者の間に入って工事を受注し、甘い汁を吸う構図が広くあること」です。

 長崎の場合は、民間ブローカーではなく、暴力団が癒着に介在しているというのです。

 さらにこの専門家は、「名前も知らないような小さな暴力団や右翼団体が、資金源を求めて行政に介入して巣食い、生きのびている実態があるのではないか」と指摘しました。

 警察の警備、警戒体制への疑問も市民から出されています。この数カ月に限っても長崎県や長崎市の裏金や公共事業をめぐって、右翼団体の街宣車が県庁・市役所周辺でがなりたてる異様な姿は多くの市民が知るところです。

 同市のある幹部職員は、「本気で暴力団を長崎から一掃しないと『何が観光都市か、平和都市か』と、市民は納得しないでしょう」と、多くの市民の思いを代弁しました。(長崎・田中康)