下方に乗船ルポも

2007年2月25日(日)「しんぶん赤旗」

米原子力空母、佐世保に

長崎 平和団体が抗議集会


 米海軍の最新鋭原子力空母「ロナルド・レーガン」(一〇二、〇〇〇排水トン)が二十四日早朝、長崎県佐世保に入港しました。原水爆禁止佐世保協議会と佐世保市平和委員会は、港口を見下ろす同市野崎町で、緊急抗議集会を開き、佐世保原水協の山下千秋理事長(日本共産党市議)は「佐世保を米国がおこす戦争の足場にさせてはならない」と訴えました。

 同空母の日本寄港は初めて。修理に入った空母キティホークの代替艦として西太平洋地域での即応態勢に対応するための寄港です。米軍再編がすすむなか、佐世保を原子力空母の準母港化する布石とみられています。

 ロナルド・レーガン空母打撃群のマートグリオ司令官は艦内での記者会見で「日本周辺に展開している間に、海上自衛隊との訓練を行いたい」との考えを示しました。

 予定より三十分以上早い午前八時前、搭載機を満載した長さ三百三十三メートルの巨艦が、港入り口に灰色の姿を見せました。空母の周辺を巡視艇などがガードし、まわりの漁船は動けません。

 同空母は「核空母レーガンは帰れ」のシュプレヒコールのなか港中央に停泊しました。

 趣味で写真を撮りにきたという男性らは「何のためにこんなすごいの(空母)が入ってくるのか」「だんだんひどい世の中になる」などと話していました。

 同空母の寄港は二十八日までの予定。遅れて、随伴艦三隻のうちイージス巡洋艦レイク・シャンプレーンが同港に入港しました。

最新鋭 米原子力空母レーガン

世界一危険な場所

西太平洋に“にらみ”

乗艦ルポ


 最新鋭の原子力空母ロナルド・レーガン。米海軍は長崎県佐世保入港の前日の二十三日、佐世保沖で日本の報道陣に初公開し、記者も同行しました。(竹下岳)

 「ここは世界一危険な場所だ」。ロナルド・レーガンの飛行甲板の上に立つと、説明にあたったパイロットの言葉にうなずけます。全長三百三十三メートルの甲板から、ほぼ一分おきに空中に飛び立つ数十機の艦載機。そのたびに爆音と熱風とジェット燃料のにおいが充満します。静止状態から時速数百キロに加速するまでは約五十メートル、五秒未満です。

着艦の衝撃

 報道陣は福岡空港から米軍輸送機で移動しました。機体に窓はありません。徐々に高度が下がり、乗組員が「さあ、来るぞ!」と叫んだと同時に、「ドーン」という強力な重力がかかって座席に押し付けられました。着艦の瞬間です。

 艦載機は機体後部のカギ状の着艦装置で、甲板上の三本のワイヤのどれかを引っ掛けて停止します。高度な技能を要するため、飛行士は事前の離着陸訓練による資格取得が義務付けられています。空母艦載機が常駐する米海軍厚木基地(神奈川県)の周辺住民は、この訓練の爆音に苦しめられているのです。

何のためか

 イラク軍事作戦などに参加し、昨年七月末に米本土に帰還した同空母は五カ月後の今年一月、日本など西太平洋地域への展開を命ぜられました。次の航海までの間隔は通常、六、七カ月。米海軍は今回の展開を「サージ・デプロイメント(急派)」と呼んでいます。ロナルド・レーガン空母打撃群のマートグリオ司令官は「部隊の柔軟性と即応性を示したものだ」と強調しました。

 「共同交戦能力」(CEC)と呼ばれる最新鋭の戦闘指揮システムも公開されました。クラフト艦長は「空母、空母艦載機、空母に随伴する護衛艦のそれぞれの情報を瞬時に共有できる」システムだと説明します。同艦長は、二〇〇八年に横須賀に配備が計画されている原子力空母ジョージ・ワシントンには、さらに改良されたCECが搭載されていることを明らかにしました。

 「最新鋭」ぶりを誇示するロナルド・レーガン。二十階建てビルの高さに匹敵する米空母の姿を目にするたび、「この巨大な力はいったい何のためなのか」と強い疑問をいだきます。

 ブッシュ政権の先制攻撃戦争で空母打撃群は決定的な役割を果たしました。イラクでもアフガニスタンでも情勢は泥沼化し、軍事力で「テロとのたたかい」に勝利できないことは明らかになっています。北朝鮮の核開発問題も六カ国協議での外交的解決の道が開かれつつあります。

 「西太平洋への展開は同盟国への米国の目に見える関与を示したものだ」と語るマートグリオ司令官。しかし今後も巨大な軍事力を展開し、日本国民が基地の負担を負わされつづける必要性は「目に見える形」では示されていません。