「しんぶん赤旗」2006/7/11
戦争肯定の「被害受忍論」
 平和研究所 特別講座で解明



 長崎平和研究所(川原紀美雄所長)は八日、平和研究特別講座を開き、九州大学大学院助教授の直野章子さん(34)が「戦争被害受忍論と被爆者運動」と題し講演しました。長崎市岡町の被災協講堂に、約六十人が参加しました。

 「若い世代が被爆者運動を理解し、どう引継ごうとしているかの立場から」と前置きした直野さんは、広島原爆で祖父を殺された被爆二世です。

 直野さんは、「一九八〇年十二月被爆者にとってがまんできない出来事があった」として、「原爆被爆者対策基本問題懇談会答申」の原爆被害受忍論」を指摘しました。 「在外資産訴訟」判決として登場した戦争被害受忍論が、どのようにして犠牲の内容が「生命」にまで拡大され国民が耐え忍ぶべきものとされてきたかを解明。「おそるべき戦争肯定の論理」と批判しました。

 直野さんは、「国家による戦争遂行権を否定している現憲法のもとでは『受忍論』はおかしい」とのべ、「これに正面から対峙(たいじ)し、国家補償の援護法を求めたたかってきたのが被爆者運動。再び誤りを繰り返させず平和な未来を手渡すためのものであり、たたかいをムダにしてはならない」と、被爆者運動を継承する意義を強調しました。

 参加者からは、「『受忍論』が、主権在君、戦争責任者の容認の論理とつながっていることがわかった」などの声が出されました。
原爆被害受忍論とは
 厚生大臣(当時)の私的諮問機関である「原爆被爆者対策基本問題懇談会」の答申。原爆被害について「国をあげての戦争による『一般の犠牲』として、(生命・身体・財産等)すべての国民が等しく受忍しなければならない」としました。戦争を遂行した国の責任には触れず、被爆の実相を無視した被爆行政の根拠の一つとされています。