有明海再生の具体的な一歩
開門求め仮処分申し立て 佐賀地裁に沿岸4県漁民17人

 国営諌早湾干拓事業をめぐって、漁業被害を受けている有明海沿岸四県漁民十七人が十月三十一日、諌早湾を閉め切っている潮受け堤防排水門の開門(海水導入)と開門調査、その結果が出るまでの事業凍結を求める仮処分を佐賀地裁に申し立てました。
 申請者の一人で、タイラギ(二枚貝)漁などを営む佐賀県太良町の平方宣清さん(52)は「漁民の力ではとめることができないなら、司法の力で国を動かし、笑って生活できる豊かな海を戻してほしい」と訴えました。
 馬奈木昭雄弁護団長は、「具体的に再生をめざすとりくみが着手された。いよいよ開門を実行するときが来た。あとは再生の道筋を一気に開かせる」と語りました。
 申請した十七人は、ノリ養殖、タイラギなど有明海の象徴的な魚種・漁場を網羅し、同地裁で審理中の「よみがえれ有明訴訟」原告約二千人を代表する形で、おこなったもの。
 漁民らは、二〇〇二年の提訴以後の裁判・公害等調整委員会のたたかいで得られた到達点を踏まえ、有明海再生に不可欠な開門(海水導入)を正面から求める裁判に踏み出しました。
 佐賀地裁は工事を差し止める仮処分を決定しましたが、福岡高裁は開門調査を「漁民に対する農水省の責務」としながら差し止めを取り消し、最高裁が九月末に高裁決定を追認。公害等調整委員会も「事業が影響を及ぼした可能性を否定しない」との談話を発表しながら、因果関係を認めなかったため、漁民・市民・研究者の激しい怒りで行動に立ち上がっています。
 仮処分申請と報告集会には、日本共産党の田村貴昭衆院比例候補(九州沖縄ブロック)が参加し、漁民らを激励しました。


有明海再生の道筋を開こう 四県漁民・市民100人が集会

 「いよいよ開門のたたかいだ」||。国営諫早湾干拓事業の排水門の常時開門(海水導入)を求める仮処分を佐賀地裁に申し立てた十月三十一日、漁民と市民約百人は佐賀市内で集会を開き、新たなたたかいに着手した決意と意気込みを示しました。
 会場には、東京からも支援に駆けつけ、じん肺闘争にふれて「ヤマの男が勝てたのに、海の男が勝てないわけがない」と激励しました。
 新たな仮処分は、同地裁で審理中の「よみがえれ有明訴訟」原告約二千人を代表する形で、四県漁民十七人が、有明海再生に不可欠な常時開門と開門調査、その調査結果が出るまでの事業凍結を求めたもの。
 長崎県有明町漁協の松本正明元組合長(53)は「有明海をよみがえらせるために中長期開門が必要だ」と訴え、同県島原市の吉田訓啓さん(41)は「開門調査の要求は市議会でも可決された。必ず通る」と決意を込めました。
 開門の要求は、二〇〇〇年のノリ大凶作の直後から四県漁民が政府に求めてきました。提訴以来三年のたたかいをへて、開門を拒む政府・農水省に対し、開門を求める裁判闘争を開始しました。
 工事差し止めを取り消した福岡高裁でさえ、開門調査を「農水省の責務」とのべ、不当な司法判断の中でも、国の「諫早湾干拓事業と漁業被害は無関係」との主張は退けました。
 申し立てでは、漁民には有明海再生を求める権利があると解明したうえで、「常時開門は、被害回復のためにも、原因究明のためにも必要不可欠であり、有明海再生にとって必要最低限度の要請だ」と主張・立証しています。
 漁民側は、公害等調整委員会の専門委員会報告書、有明海研究者五人の意見書、日本海洋学会編『有明海の生態系再生をめざして』の三点を新証拠として提出。弁護団は「結論は、因果関係が認められる、と一致している」と強調し、「年度内に結論を迫っていく」としました。
 馬奈木昭雄弁護団長は「いよいよ開門を実行させるときが来た。あとは再生の道筋を一気に開かせる」とよびかけ、漁民らが深刻な海の状況と宝の海をよみがえらせる熱い思いを語りました。

「しんぶん赤旗」2005/11/2