有明訴訟で報告集会 
中長期開門すれば「宝の海」取り戻せる 熊本、長崎…相次いで漁民立ち上がる 


 「漁民は公害等調整委員会の不当裁決に抗議し、漁民とその家族約五百人で佐賀地裁に追加提訴し、たたかいを広げる」-。
 「よみがえれ有明訴訟」の第十七回口頭弁論が開かれた十五日、原告団、弁護団、支援する会の約六十人は、佐賀市内の報告集会で、有明海再生にとって必須の中長期開門調査、常時開門を国に実行させ、「宝の海」を取り戻すためにたたかいを広げ強めることを確認しました。
 集会で、弁護団は、中長期開門調査を求める仮処分を申請する方針を明らかにし、「悲惨な被害があり、原因として疑わしい諌早湾干拓があり、中長期開門調査をすればもっと解明できるし、それが国の責務だという、われわれが負けた決定の中でもつくりあげた到達点がある」と強調しました。
 熊本県のノリ漁民、中尾利秋さん(63)は、「早く常時開門(海水導入)してもらいたいのです。水門を常時開けると有明海に被害が出るかのように国はいうが、毎日水門を開け調整池の汚水を有明海に流している。これを常時開門して有明海の海水を逆に調整池に流せば被害が起きないばかりか、費用もかからず元の海に戻すことができる」とのべました。
 中尾さんは「ことしはノリの種付けが出来るのかと心配している。ノリだけでなくコノシロやクチゾコなど魚も漁獲量が約十分の一に減り、定置網も今年は二カ月間ほどで取り止めている状態。アサリやタイラギはほとんど生息していない」と海の悪化を訴えました。
 近く追加提訴する漁民とその家族五百人のなかには長崎県から百人が参加しています。
 馬奈木昭雄弁護団長は、「不当な福岡高裁に抗議して熊本の漁民が、いま長崎の漁民が怒りを形として示した。今度は市民が怒っていると形で示そう」とよびかけました。
 弁護団は、漁業被害を認めながら原因が諫早湾干拓だと認めなかった公調委の裁定を批判。因果関係の判断に必要な自然科学の専門的な意見を求めた専門委員会の報告書を八カ月も非公開で封じたうえで、因果関係が認められるとしたその内容を恣意的に否定したとのべました。専門委員会の報告書を佐賀地裁に証拠として提出するとともに、公調委の裁定に対し有明海研究者による批判文書を作成中だと明らかにしました。
 集会では、各県で報告集会を開くことや、高まる漁民のたたかいにこたえ、市民の運動を強めていくことなどを確認しました。

「しんぶん赤旗」2005/9/17