全国版 「ひと」2005/6/10掲載

自衛隊基地のある街・大村市の「九条の会」代表
谷川成昭(たにがわ・しげあき)さん
 長崎県大村市に妻と二人暮らし。六十二歳。


 およそ政治には縁遠かった一人の高校教師。大江健三郎さんたち九人の「九条の会」アピールを見て胸を突かれました。「この先、日本はどうなるのか」。「風雲急」を実感しました。
 今住んでいる長崎県大村市内の宗教者や医師、教師などを訪ねました。「九条の大切さはよく分かる」と、同じ思いであることに励まされました。昨年十月、県内で初めて「大村市九条の会」発足にこぎつけました。
 長崎県で高校教師三十四年。小林多喜二の小説に出会って初めて知りました。自分が生まれたころ、「信じられないような暗い世界があった」のだと。
 治安維持法という法律で、戦争に反対する人たちが抑圧され、拷問を受け、殺された時代がこの日本にあったのだと。でも「同じような時代がまたくるかもしれない」との声には、内心、「まさか、そんなこと」と思っていました。
 ところが、教育基本法「見直し」、侵略戦争美化の歴史教科書採択、自衛隊のイラク派兵。「憲法どこ吹く風」です。歴史の逆行が杞憂(きゆう)ではないと思えてきました。
 野球の指導ひと筋、佐世保工業高時代には指導者の一人として甲子園に三回出場しました。「生徒からは学ぶことばかりでしたねぇ。『教え子』という言葉は使ったことがない」と笑う教師の訴えに、「教え子」が応じてくれました。
 「天上の弦」など、社会派漫画家・山本おさむさん(福島県在住)が寄せた連帯メッセージ。「九条を保守する立場から、同じ願いをもつ大村市のみなさんと共にありたい」。
  文・写真 田中 康