よみがえれ有明海 仮処分抗告結審
福岡高裁に三百人が集う
 
思い陳述…必ず勝つ
                         「しんぶん赤旗」2005/5/27

 「よみがえれ有明訴訟」仮処分の抗告審が結審した二十五日、福岡高裁には、四県漁民、市民約三百人が集まりました。この日は、第一回審尋で、当事者以外には非公開の仮処分審尋では異例の人数となりました。裁判所前で報告がおこなわれ、弁護団が「早期に決定。必ず勝つ」とのべ、参加者に確信が広がりました。
 諫早湾干拓の工事を差し止めた二度の司法判断に国が従わず抗告したことで、漁民たちは「国に勝てるのか」「いまの有明海では生きられず、生活がもたない」と不安を抱えて、この日を迎えました。
 福岡県大牟田市のノリ漁民、松藤文豪さん(48)は「勝つという方向を聞いてうれしかった。このままでは漁民は死に絶える。国はそれを待っている。おれたちの力だけではできないが、市民と世論の力があればできる。これまでやってきたことは無駄ではなかった」と語りました。
 佐賀県諸富町の金沢徹男さん(67)は「原告の陳述で私たちの思いをよく言ってくれた。負けたら、ノリ養殖や漁ができるのか心配したが、不安がのいた」と安堵しました。
 熊本市のノリ漁民、木村茂光さん(69)は「非常に明るく先が見えた。水門開放、有明海再生まで実現して最終的に勝つ確信を持った」と笑顔をのぞかせました。
 その後、漁民、支援者らが福岡市・天神で宣伝すると、会社員や買い物客が訴えに足を止め、次々に署名をし、約五十分の間に四百四十三人の署名が寄せられました。
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 福岡高裁前の集会や天神での宣伝には、日本共産党の田村貴昭衆院比例候補が参加しました。


漁業者が涙ながらに 福岡高裁での意見陳述

 諫早湾干拓の工事を差し止めた仮処分決定の福岡高裁抗告審(二十五日)で、福岡、長崎の三人の漁業者が涙ながらに意見陳述しました。

後を継がせたい 宇土勉さん(漁船漁業、長崎県有明町漁協)
 私には二人の息子がいます。次男は高校生ですが、長男は今春高校を卒業し、働きながら専門学校に行っています。この有明海が元に戻れば、すぐに後を継がせたいと思っています。
 私たちはギリギリのところで生活しています。もう後がないんです。どうか私たちの知っている有明海を返してください。私は先祖代々続いた漁師を終わらせたくありません。子どもから「なぜお父さんは海を守りきれなかったのか」と言われたくありません。
 諫早湾閉め切りで環境が悪くなったのだから、潮受け堤防を撤去し、元のようにすれば環境は元に戻るはずです。


漁船手放しません 加藤政憲さん(タイラギ潜水漁、大牟田市早米ヶ浦漁協)
 諫早湾閉め切り以降、漁獲ゼロやまともに漁ができず、漁で生計を立てる選択肢がありません。
 一九九九年から陸に上がって土木の仕事をしています。八歳の息子を飢えさせるわけにはいきません。結婚当初いっしょに漁をしていく約束をしていた妻も、私だけでは食べていけないので、パートに出かけています。
 できることなら海に戻りたい。100%とは言いません。せめて生活できるくらいにまで有明海が回復してくれれば、戻りたいと思っています。年間十四、五万円の維持費がかかる漁船も手放しません。私はいまでも漁師です。


豊作というが 古賀雅敏さん(ノリ養殖、福岡県大川市)
 豊作といいますが、今季も大牟田地区は不作で、七十人ほどの漁業者のうち一気に二十人ほどが廃業するそうです。
 柳川・大川地区は、来年とれる保証がないので、一枚四円でも値が付けば少しでも水揚げをと、本来二月いっぱいで終了したのを、四月まで採り続けました。労働時間は増え、手元に残る利益は減少しています。
 気象の好条件、漁業者の努力があったからこそ、不作と比較すると良かったに過ぎません。
 福岡高裁が佐賀地裁の決定を積極的に支持して、国が事業をやめるきっかけを作っていただきたいと強く願っています。