2004年9月16日(木)「しんぶん赤旗」

女児を自立支援施設へ

佐世保小6事件 2年間、強制的措置も


 長崎県佐世保市立小学校で六月、小学六年の御手洗怜美さん=当時(12)=が、同級生の女児(11)にカッターナイフで切られ死亡した事件で、長崎家裁佐世保支部(小松平内裁判長)は十五日、第三回少年審判を開き、女児を児童自立支援施設へ送致する保護処分とした上で、「二年間(行動の自由を制限する)強制的措置を取れる」とする決定をしました。「強制的措置」は、自傷他害などの処遇困難な場合に取られ、「施錠可能な特別の部屋」に入れることができるというもの。十一歳の女児に対して、しかも二年間という期間の長さも異例のことです。女児は近く、全国で唯一、女子の強制措置が可能な国立きぬ川学院(栃木県氏家町)に移送される見通し。

 小松裁判長は家庭内での成育状況を総括した上で、女児が怒りなどの感情をコントロールすることが難しかったと指摘。「傾倒していたホラー小説等の影響により、攻撃的な自我を肥大化させ確定的殺意で殺害行為に及んだ」と認定しました。

 怜美さんとのトラブルについて、「交換ノートやインターネットが唯一安心して自己を表現し、存在感を確認できる『居場所』とした」女児が、「侵入」ととらえていたことも指摘。殺害行為時に大半の記憶もなかったとしましたが、精神病性の障害は否定しました。

 児童自立支援施設 非行少年を社会復帰させることを主な目的として、児童福祉法により各都道府県に最低一カ所設置が義務付けられています。現在、国立の二施設を含め全国に五十八施設あります。個々の入所者の状況に応じて、自立に向けた生活指導や学習指導が行われます。女子の場合、強制措置が可能な施設は国立きぬ川学院だけ。



「対症療法」では解決しない状況

法政大学教授・教育評論家の尾木直樹さん

 処分決定の内容は、今回の事件を100%解明したものではありませんが、事件が非常に深刻であり、私たちが真剣に受けとめなければならないものとなっているように思います。

 これまでの少年審判事件では、少年たちに何らかの精神障害があったとされましたが、今回は精神的障害と診断される程度には至っていないとしています。今回の事件を起こした少女は、限りなく「ふつう」に近い子であり、そのような子どもたちによる犯罪と捉えるべきではないでしょうか。その意味では、これまでになく深刻な事件といえます。

 もはや、命の大切さを教えることやあいさつ運動などといった対症療法的なとりくみでは、解決しない状況ではないか。リストラや生活苦、離婚…など、今の子どもたちがおかれている状況下では、どこでも事件が起こりうるという警鐘を鳴らしているように思います。教育や親子関係のあり方、子どもの目線に立てているのかが問われています。