希望が見えた」「冷静になって考えるとき」と周辺住民の声。さらに世論喚起へ支援する会

 諫早湾干拓工事の続行禁止を命じた佐賀地裁の仮処分決定から一週間。決定のその日から同事業の全工事がストップし、各方面に大きな衝撃が走りました。長崎県で一週間の声を追いました。
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 この決定は何よりも、苦しめられ続けてきたすべての沿岸漁業者への光明でした。
 「仮処分決定が延期され、どうなるかと思っていましたが、信じてがんばってきてよかったです。希望が見えた感じがします」(有明町の主婦)、「島原の海もだんだんおかしくなってきた。(仮処分について)漁民ならだれでも堤防閉め切りが原因と知っとるよ」(孫と海をみにきた漁民)と語り、宝の海・有明海に寄せる思いが共通していました。
 一方、金子原二郎・長崎県知事は、国の異議申し立てを歓迎し、「予定通り二〇〇六年度の工事完成にむけ、国へ要望していきたい」とコメントしました。知事には、「水産県」をかかげていても、漁民の声は聞こえないようです。
 干拓地はあらゆるゲートが閉鎖され、出入りはありません。中央干拓地に通じる諫早市小野島の中央ゲートは閉ざされて静まりかえっています。 工事の音やダンプの音が消え、飛び交う鳥だけでなく、昼間から虫の鳴き声さえ聞こえてきました。
 時折、長崎県農林試験場の関係者が、許可をうけて中に入り試験農場へ出入りしています。
 しかし、工事用の重機はまだ現場に残されたまま、「異議申し立て」による早期の工事再開を期待しているのでしょうか。
 たまたまゲート前にいた工事関係者に、「静かになりましたね」と水を向けると、「はいおかげさまで…」と言いかけ、あわてて言葉をのみ込みました。
 ゲートにつながる道路沿いにいた主婦は、「トラックが連なって走っていた毎日がウソみたい。どうしたらいいのか(国も)冷静になって考えるときだと思う」と話していました。
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 国は決定が出されたわずか五日後、佐賀地裁に異議を申立てましたが、そのあわてぶりにも批判が集まっています。
 長崎市の水浦征男さん‖修道院神父‖は、「何かあわてふためいている感じですね。中心は漁民の訴え、生活・生命を脅かされている現実をどうみるかです。国の姿勢はそれを無視しています。今回の判断は、人間的でより公正なもの」といいます。
 日本共産党の中田晋介長崎県議は、金子知事が「詳細は把握していないが、地裁の判断がどうあろうと工事がすすめられるように」(二十六日夜)とのべて、重い司法判断を何ら検討もせず工事続行を口にした不見識を批判しました。
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 「(仮処分は)大局的にいえば、事業中止を求めてきた運動が勝利に向かって歩みだし、その方向をしっかり示した」と、「よみがえれ!有明海訴訟を支援する長崎の会」の高村暎事務局長は強調します
 高村氏は、「国は中長期開門調査もせず『原因は分からない』と繰り返すだけ。、開門して潮を入れはっきりするのが怖いのですよ。しかしそんないいわけが通用しないのが今回の決定。問題は国の横暴を許さない声、とりわけ地元長崎の声を大きくすることです。県民の声は事業への批判が多数、あらゆる人のつながりを活かしてネットワークを広げ、声なき声を結集したい」と語りました。
仮処分決定から一週間、ダンプ消え、虫の音戻る
「しんぶん赤旗」2004/9/4