2004年6月7日(月)「しんぶん赤旗」

佐世保・小6事件から1週間

女児、三学期から荒れ、孤立…

「わが子は」「できることは」 緊急懇談会父母から声


  長崎県佐世保市の市立小学校六年生の御手洗怜美(みたらい・さとみ)さん(12)が、同級生の女子児童(11)にカッターナイフで切られ死亡した事件から七日で一週間。女子児童はなぜ、仲良しの怜美さんに切りつけ死亡させたのか。その輪郭が少しずつ明らかになっています。長崎市で起きた駿ちゃん殺害事件から一年を迎える長崎県の人たちの衝撃は大きく、「いま、おとなは何をしなければならないのか」と長崎市や佐世保市で集会が緊急に計画されています。

 これまで、関係者の話から女子児童は、五年生の三学期から荒れはじめ、子どもたちは「異常」に気づいていたことが明らかになっています。同級生の話によると女子児童は二月下旬、親から言われてバスケット部を退部。その後荒れはじめ、教師のいないところで壁に頭をぶつけたり男子生徒を追い回してけり上げる行為もしていました。

ネット上の会話で

 ネット上の会話が一つの引き金にもなっていたこともわかってきています。長崎県警の事情聴取で、女子児童はホームページに「ぶりっこ」などという悪口を怜美さんに書かれ、やめてといってもやめてくれなかったこと。その「書き込みが原因」ともいっていたといいます。ホームページには「うぜークラス」「下品な愚民」などとクラスや同級生をののしる言葉がたくさん書き込まれていました。

 また今年の五月、ホームページで残虐シーンが問題となった映画「バトル・ロワイアル」になぞらえた物語を書いていました。女子児童がクラスで孤立し、親や同級生に相談できず「一人で悩んでいた」ともいいます。

保護者に危機感

 長崎県では、事件の衝撃が広がっています。長崎市に住む池上明子さん(41)は「やっぱり起きてしまった」と悔やみます。中一、小四、小一の三人の子どもを育てる池上さんは「子どもたちには競争、競争の窮屈な世の中です。被害者と加害者について周りは仲良しだったと見ているようですが、確執があったのでは」といいます。

 「ショックです」というのは、佐世保市の学童保育「ぼちぼちくらぶ」の保護者・徳永良子さん(44)。「身近なところで起きてしまいました。『うちの子に限って』と言っていられない危機感を覚えました」といいます。PTAの会長を務めた経験をもち、佐世保市内に学童保育所を立ち上げた徳永さんは「高学年こそ自然の中でのびのびと遊び、けんかをしながら育ち合いのできる場が必要ですが、どうだったのでしょう。この時期の女の子にある不安定な心の変化や兆候を、親も学校も注意深く見守る必要がある」と指摘します。

 事件後の三日、佐世保市の「フリースペース・ふきのとう」の代表らが緊急に懇談会を開きました。事件が起きた小学校に子どもを通わせる母親も参加し、「助けてほしい」と涙を流しながら訴えました。「わが子が加害者にも被害者にもなるのではないか」「何とかしないと」という声もあがりました。

元気取り戻して

 佐世保市では十二日に事件を考える緊急集会を予定。長崎市では十三日、長崎・少年事件について緊急懇談会が県母親大会で開かれます。

 事件があった小学校は、保護者向けの集会を開くなど「一日も早く児童に元気を取り戻したい」といっています。

 親も学校も地域も、再生への模索をはじめています。菅野尚夫記者