「潮受け堤防を撤去し、干潟を復元せよ!」と、漁業者らが深刻な生活実態や「異変」の実態を報告、有明海再生の展望を討論。

 長崎県の諫早湾干拓事業で湾奥部が閉め切られて六年がたち、有明海全体に深刻な「異変」が広がるなか、今年の「干潟を守る日2003IN諫早」が十日、長崎市公会堂で開かれ約八百人が参加しました。諫早干潟緊急救済本部(山下八千代代表)と実行委員会が主催したもの。
 集いでは長野県の田中康夫知事が、「なぜ大型開発は止まらないできたのか」と題して記念講演。「福祉や教育、環境への公共投資には、雇用や経済効果がないというのはまちがい」と、国主導の大型開発県政から脱皮し、福祉、環境保全型の自主的公共事業に転換している状況を報告。諫早湾干拓事業について、「先輩が始めた事業を自分たちの代で止められないという呪縛を解いてやることが必要」と政治家の役割を強調しました。
 「潮受け堤防を撤去し、干潟を復元せよ!|直ちに西工区前面堤防工事中止を|」のシンポジウムでは宮入興一愛知大教授が基調講演。「短期開門調査が実施され、『異変』と事業の関係での科学的解明がすすんだ。一方で政官業ゆ着の実態が明白になった」と激動の一年を振り返り、「漁民と市民の連携が強まり、強固な運動や裁判が成長した」と、その意義を強調しました。
 宮入氏は、必須性など「公共性」の六つの基準から、「諫早湾干拓事業はその要件をすべて欠落させており、『公共事業』として著しい欠陥事業」と指摘。長崎県での「政治とカネ」の解明を通して、政官業の利権構造に群がる集団と、県民の間のネジレを正す運動を呼びかけました。
 漁業者らによる討論では、漁民市民ネットワークの松藤文豪代表が「今年のノリの水揚げは最盛期の三割。若い人の多くが生活のため働きにでかけ、このままではつぶれるのを待つばかり」と、深刻さを増す生活実態を報告。「よみがえれ!有明訴訟」の堀良一弁護士は、「裁判の意見陳述で『有明海異変』の深刻さが浮きぼりになっており、工事中止を求める仮処分の九月結審をめざす」と、世論を広げる夏の運動を訴えました。
干潟を守る日2003
「大型開発」で田中長野県知事が記念講演
「しんぶん赤旗」5月12日