2003年1月16日(木)「しんぶん赤旗」

長崎県連前幹事長逮捕

抜け道ふさがれた

公共事業での自民資金集め


 「(公共事業受注企業の献金は)一体どこまでが違法なんだ」と不安を隠せない自民県議。十五日、自民党長崎県連の浅田五郎前幹事長(65)、安田実穂事務局長(64)が逮捕されたニュースは、自民党、県庁などに大きな衝撃を与えています。


税金還流の利権にメス

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逮捕された浅田五郎前自民党県連幹事長・前県議の事務所=15日、長崎市江戸町

 逮捕のニュースを聞いて、自民党長崎県連の幹事長経験者である加藤寛治県議会議長は、「(公選法の)規定があいまいで、どの時点で献金を要請したら選挙目的になるのか明示されていない」と不安を隠せませんでした。

 公職選挙法は、地方公共団体と工事契約を結んでいる者の首長や議員の選挙に関する寄付を禁止。また、首長、議員がその寄付を受け取ることも禁止しています。しかし、「選挙に関する寄付」の禁止という公選法の規定について、検察側はこれまで適用に消極的。自民党などは、一般的な「政治資金」と言いぬけることで、「抜け道」を歩んできました。いまその「抜け道」が問題になっています。

 浅田前幹事長は逮捕前日の十四日、後援会の拡大幹部総会に出席、「公共事業の中での資金調達がはたしていいのか」などと語っていました。

 問われているのは、公共事業を使っての政治資金集め――税金還流という、これまでの自民利権政治そのものです。

 「県知事選という大事なことに不正なカネが使われたことは許せない。徹底的に解明してほしい」と話すのは、弁護士で「民主長崎県政をつくる会」代表委員の横山茂樹さん。

 同会は、一昨年二月、諌早湾干拓事業をめぐる政官業の癒着を厳しく批判、清潔な県政への転換を呼びかけました。ところが、そのときの選挙が受注企業からの違法献金によって汚されていたのです。

 「長崎県で、これほど大きな不正事件が見つかったことはない。税金の還流だ。県民の生活をきちんと支えてほしい、と訴えても、金子県政は耳を貸さなかったが、ここに大きな原因があることがよくわかった。諌早湾干拓など、常識に反する大型公共事業を正常に戻すいいチャンスだ」と語ります。

 昨年十二月の県議会で「県知事は真相を解明し、みずからの責任をはっきりさせよ」と追及した日本共産党の中田晋介県議は、「県議会としても百条調査委員会をつくるなどして、徹底的に解明する責任がある」と強調しています。

いずれ明らかに 逮捕直前に語る

県連事務局長

 長崎地検に逮捕された自民党長崎県連事務局長の安田実穂容疑者(64)は逮捕直前の十五日午前、取材に対し、「ここまで世間を騒がせて、責任逃れをするつもりはない。いずれ時期が来ればすべてを明らかにする」と語りました。

知事「おわび」

 金子原二郎長崎県知事や自民党県連は十五日、謝罪のコメントなどを発表しました。

 自らの選挙戦をめぐり逮捕者が出たことについて、金子知事は「誠に遺憾であり、県民に対し衷心よりおわび申し上げる」とするコメントを発表。自民党長崎県連は三好徳明総務会長が会見。「このような事態になり党員に申し訳ない」とした上で、幹事長に集中していた資金集めの手法を改めていく方針を示しました。


異例の捜査

 今回の長崎県知事選をめぐる一連の違法献金事件は昨春、長崎地検が建築資材会社の破産を調べた内偵捜査がきっかけでした。捜査の過程で、中堅ゼネコンの不動建設社員がこの資材会社からの海砂納入量を水増し請求した詐欺事件が発覚。また、県土木部元技監による県議のパーティー券あっせん事件も判明し、摘発されました。今回の公選法違反事件は、その捜査の延長線上にあります。

 県連に対する違法献金が表面化したのは、不動建設や五洋建設などを捜索した昨年十二月初め。政治資金規正法上は容認される企業献金に公選法の「網」をかける異例の捜査に、ゼネコンの間では「これで違反になるのか」と戸惑いが広がりました。

 同地検は同月末には自民党長崎県連を捜索、ゼネコン側の捜索も進め、大手から経営再建企業まで十一社がその対象に。この間、県連側の露骨な資金集めや、鉄建や清水建設などのヤミ献金疑惑が次々に明らかになりました。当初は「規正法に基づいた通常の寄付」と強気だった浅田五郎容疑者(65)も、ついに県議の辞職に追い込まれました。

 今回の捜査は利権とカネで長年むしばんできた「土建屋政治」の実態改善を改めて厳しく問い掛けています。