長崎・男児誘拐殺害事件、父母や教師ら三百人超す人が参加し、事件の背景や根の深さを学び討論

 「自分の考えだけでは不安で|」と参加した十一歳の子を持つ母親、「中学生の心の中を知りたくて」と市外から駆けつけた教師…。長崎の少年事件で二十日、講演と討論の集いが開かれ、長崎市の県自治会館には会場いっぱいの三百人を超える人が参加。事件が広げている波紋の大きさを改めて浮きぼりにしました。
 少年事件に衝撃をうけ、子育てへの不安が広がるなかで、「語り合うことで何かを見つけよう」と集った父母や教師、保育士らが力を合わせて二回の緊急懇談会をもち、今回「パートV」として準備したものです。
 「少年事件に何を学ぶか|親、地域、学校、行政に問われるもの」と題し、長崎の教育問題にずっと携わってきた広木克行・神戸大学教授が講演し、参加者も積極的に発言しました。
 広木教授は、事件を起こした十二歳の少年に対する精神鑑定結果が出されたことに関連し、「これで一件落着としてはいけない。少年の生い立ちや育ち方を分析し、親や教師の不安に答え、これからの子育ての糧になるようにしなければならない」とのべ、緊急懇談会の代表が自主的に話し合い、市民の声を県に提言した行動を評価。少なくない子ども達が持っている、事件との共通点に答える努力こそ求められていると強調しました。
 同教授は、教訓を学ぶためには、「少年の育ちや環境、学校生活、人間関係など、事実に基づく具体的調査をまとめる」ことが不可欠とのべ、県教育長の諮問機関として設置された県青少年対策緊急会議の重要な役割を指摘。「一般的提言でなく、真に『長崎方式』と呼べる改革が望まれる」として、母親の代表や弁護士、児童精神科医、教育学者、養護教員などの現場教師、産婦人科医と泌尿器科医を含む、権限とシステムをもった本格的会議に発展させるべきと期待をのべました。
 広木教授は、事件から学び検討すべきこととして、@男の子の性の不安に答えられる、性教育の抜本的見直し A少年事件の低年齢化が競争の低年齢化の反映であることを直視し、国連・子どもの権利委員会の指摘を生かした競争システムの見直し B子どもには「教育家族」でなく「生活家族」こそ必要、子どもを守る親と子の信頼関係が原点 との三つの柱を提起しました。
 会場からは、「『殺すぞ』と平気で口にする高校生。破壊や殺人を繰り返すテレビゲームの影響にブレーキをかけたい」、「性の問題で男子は父親以外に相談できる人がいない。男のスクールカウンセラーが必要ではないか」などの積極的発言が相次ぎました。
 また、「男のための性教育を願っています。子ども達の競争の低年齢化を実感します」(元保育士)、「指摘された事件の背景の一つひとつに共感できました」(PTA役員)、「教育制度のもつ『教育力』とか、受験競争の低年齢化がもたらす発達障害など、国の政策に深い関わりがあることが分かりました。声をあげ、行動することが大事だと痛感しました」(女性)など、事件の背景や根の深さ、改善のための行動を指摘する多くの感想が寄せられました。
「少年事件に何を学ぶか」で広木教授が講演
「しんぶん赤旗」2003/9/22