長崎で被爆者医療に力を尽くした故・永井隆博士が、晩年の三年間を過ごした二畳ひと間の住居「如己堂(にょこどう)」と、長崎市永井隆記念館の隣接地(同市上野町)に、住民の反対を押し切って高層マンションの建設が進められている問題で、工事が原因とみられる事故が先月二度にわたって発生。「あまりに横柄な業者、ズサンな工事」と怒りの声が広がっています。「法的に問題ない」と、高さ三十二b・十一階建てマンション建設を進めているのはユニカ(本社福岡市)。
 事故は、工事現場からの鉄砲水で民家の石垣が破損(八月十四日)、別の民家の石垣が十bにわたって崩壊(同二十五日)したもの。市の建築指導課は、「原因は長い間の(工事の)振動が与えたもの」として、業者に強固な石積みによる復旧を求めています。
 建設に反対している、「如己堂周辺の景観を守る会」(深堀哲也代表)の代表六人は一日、長崎市に対し、事故後の行政指導の内容が知らされず、工事現場の掲示書類もズサンだとして文書による説明を要求。
 応対した同市都市計画部の古殿啓二次長らは、「補強を指導したがその工事の前に事故が起こった。認識新たに指導にあたりたい」と弁明。市の工事ではないが、今後は業者と住民の間の斡旋・調停へ「一歩ふみ込んで対応したい」と答えました。
 高層マンション建設の現場は平和公園の北約二百五十bの丘。「原爆犠牲者が集中する慰霊の地に高層ビルはふさわしくない」と、住民自ら住居の高層化を自粛してきた地域です。市も二年半前の永井記念館改築の際には、「周辺の景観を損なう」と二階建にとどめた経緯があります。
 同地域の住民と「景観を守る会」はこれまで、ビル建設で平和祈念像の後方の景観がどうなるかを描いたグラフィック写真も示して建設反対を訴え。一万二千を超す署名を添えて「市長は平和のゾーンを守る指導を」と求めてきました。また、この地域を含めた住民の発議による「まちづくり指定」運動をすすめています。
工事強行で二度も事故つづく
「被爆の丘に高層マンションはいらない」と住民反対
「ぶしんん赤旗」2003/09/04