2003年7月20日(日)「しんぶん赤旗」

長崎・男児殺害を考える

子と親、育ちあう場を

佐賀バスジャック事件で重傷を負った被害者 山口由美子さん


 バスジャック事件から三年が過ぎました。少年たちを取り巻く社会の状況は当時と何も変わっていませんから「また起きるのではないか」と感じて来ました。

 バスジャック事件の少年の両親がお見えになりまして「笑顔が見えてきました」と少年の近況を話してくれました。事件を一生背負っていかなければならない加害少年の親の気持ちが分かります。

 少年はいつかは社会に戻ってきます。戻る場所は両親の所です。親があのときのままの親では帰った少年もつらい。両親の苦悩を思いますと、加害者の親もカウンセリングを受け、当時とは違った親になっていてほしいと願っています。

 補導された長崎の少年には厳罰で臨むべきだという議論がされています。とんでもないと思います。人間は環境の子であり、少年が追い込まれた社会の現状を考えるべきです。「成績が良かった」とも伝えられていますが、親や周囲のおとなたちに愛されるために必死でそうしてきたのではないでしょうか。

 「キレるとパニック状態になる」とも言われています。でも、少年の心は、ストレスがいっぱいいっぱいになるまでがまんしていたのではないかと思われてなりません。バスジャックの少年もそうだったし、自分が安心・安全・自由でいられる居場所がなかったのではないかと思うからです。

 私も不登校の子を持っていたことから、バスジャックの少年の気持ちが痛いほど分かりました。学校に行けないで苦しんでいるわが子に向き合うことで、私自身がおとなの目線から子どもの目線に下がったり、おとなの目線に戻ったりできるようになりました。

 この間のつらい体験を通じて昨年民家を借りて、子どもと親の学び育ちあう居場所を開設しました。子育てに悩む親の会「ほっとケーキ」と、不登校の子どもたちのための「ハッピービバーク」です。

 こうして社会にいかに働きかけて生きるのかを学びました。事件から三年がたち、生きていて良かったと実感しています。