核攻撃資格ある米原潜10隻が日本に寄港 −佐世保にも−98〜00年

2002年12月1日(日)「しんぶん赤旗」

米文書で判明 新原氏が発表

 米太平洋艦隊潜水艦司令部(米ハワイ州パールハーバー)所属の攻撃型原子力潜水艦のうち、十隻が一九九八年一月から二〇〇〇年五月の間に、核兵器を使う任務につく能力と資格を認められた艦船に与えられる「核攻撃能力の認証」を受け、そのすべてが同期間に日本に寄港していたことが明らかになりました。米海軍の内部文書からわかったもので、三十日、都内で開かれた非核の政府を求める会のシンポジウムで、同会核問題調査専門委員の新原昭治氏が発表しました。

 太平洋地域に配備された攻撃型原潜の「半数以下」に「核攻撃能力の認証」が与えられていることは、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)年鑑(二〇〇一年版、二〇〇二年版)で指摘されていましたが、艦名が判明したのは初めて(別項参照)。米ノーチラス研究所のハンス・クリステンセン研究員が入手した、原潜に対する核攻撃能力認証について報告した米海軍内部文書にあったものです。

 十隻はいずれもロサンゼルス級の攻撃型原潜です。核弾頭付き巡航ミサイル・トマホークを積載して、対地核攻撃をおこなう能力をもっています。太平洋艦隊の攻撃型原潜は毎年、西太平洋へのローテーション展開(WESTPAC)などでひんぱんに、神奈川県・横須賀、長崎県・佐世保、沖縄県・ホワイトビーチに寄港を繰り返しています。

 米国は九一年九月、海外から戦術核兵器を引きあげる方針を表明しましたが、一貫して攻撃型原潜への「有事」再配備の方針をとっており、ブッシュ政権は八月の「国防報告」でも「有事」配備にふれています。

 日本への米国の核兵器持ち込みをめぐっては、日本共産党の不破哲三委員長(当時)が米政府の解禁文書で密約の存在を明らかにしていました。「核攻撃能力の認証」を受けた原潜が日本に寄港していた事実は、そうした密約のもとでの新たな核持ち込みの疑惑を深めるものです。


 「核認証」を受けた太平洋艦隊の十隻の米攻撃型原潜 ブレマートン、ラホヤ、ポーツマス、サンフランシスコ、ヒューストン、バファロー、ソルトレークシティー、オリンピア、ホノルル、キーウェスト

解説

「核認証」原潜寄港

核出撃基地化の危険


「核攻撃能力の認証(nuclear certification)」は、米国防総省が、核兵器の発射や投下、運搬、貯蔵に従事する艦船や航空機、施設、部隊にたいして、一定の時間的間隔(十八カ月以内)でくりかえし与えています。専門チームが査察を行います。

 国防総省のマニュアルによれば、装備や施設あるいは要員などがもともと核兵器の使用能力をもっていても、この査察に合格し、公式に「認証」を受けなければ、核兵器任務を遂行する資格は与えられないことになっています。

 これまでも横須賀を母港とする空母に随伴する艦船が「認証」を受けていたことは知られていました。

 攻撃型原潜の場合は一九九四年の「核態勢見直し」で、「有事」に核弾頭付き巡航ミサイル・トマホークを再配備することになっています。つまり攻撃型原潜の「認証」とは、核トマホーク使用をおこなう能力と資格が正式に付与されるということです。

 このことは、日本にひんぱんに寄港する攻撃型原潜にひそかに核トマホークが装備される可能性があること、あるいはこれまでも日本国民にまったく知らされないまま、米軍が「有事」と指定して、秘密裏に核トマホークを積んで日本に寄港した可能性があることを示唆しています。

 現在のブッシュ米政権は、非核保有国に対する核先制攻撃さえ辞さないことを公式の戦略にしています。そのもとで、核兵器任務を「認証」された攻撃型原潜が日本にひんぱんに寄港することは、唯一の被爆国が米国の核の出撃基地として使われる危険性を意味します。(山崎伸治記者)