教育助成金不正受給一億五千万円の詐欺容疑で七人 

 造船準大手、佐世保重工業(SSK、本社東京、岡田達郎社長)の助成金不正受給事件で、長崎県警と佐世保署は二十七日午後、同社が社員の教育訓練を偽装し、国の助成金約一億五千万円をだまし取ったとして、詐欺容疑で同社の前社長で佐世保造船所前所長の姫野有文容疑者(同日付で辞任)、元取締役副所長の水広幸雄容疑者(四月三十日付で辞任)ら七人を逮捕しました。

  姫野容疑者は事件への関与を否定していましたが、県警や関係者の事情聴取の結果、同容疑者の関与が濃厚と判断しました。不正受給の目的や流れなどを調べます。

 調べによると、姫野容疑者らは社員の教育訓練を実施した企業に支給される助成金「生涯能力開発給付金」を不正受給しようと企て、溶接技術者ら延べ約五百人の訓練を偽装、一九九九年度分の計約一億五千万円を不正に受給した疑い。

 姫野容疑者は、今年三月の記者会見で不正を認め、受給金を返納しましたが、「実態は知らなかった」などと自らの関与は否定していました。しかし、事件の「監督責任」を取る形で、二十七日の株主総会で辞任しました。

 同社はまた、社員の出向に対する「中高年労働移動支援特別助成金」に関しても一部不正を認めており、県警は同助成金の受給についても立件を視野に捜査をすすめています。
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 国の助成制度を悪用し、多額の金をだまし取ったとして詐欺容疑で長崎県警に逮捕された佐世保重工業(SSK)前社長の姫野有文容疑者は、備品一つ買うのにも社長決済が必要」(元社員)というワンマンぶりで、社内外に知られていました。
 姫野容疑者は一九三八年、長崎県佐世保市生まれ。九八年六月社長に就任しました。「地位が上がるにつれてワンマンぶりはエスカレートした」と元社員。「自分をけ落とそうとする人間は容赦なく切り捨て、その結果イエスマンばかりが残った。会社というより『個人商店』だった」といいます。
 九九年四月、姫野容疑者は佐世保商工会議所の会頭に就任。ここでも強引な経営手法を会議所運営に取り入れたことから、当時の副会頭四人が「会頭と意思疎通が図れない」として辞任する異例の事態になりました。

 SSKは旧海軍の造船施設を借り受けて一九四六年に設立。大型船建造などで名をはせましたが、韓国や中国に地位を脅かされ、日本の造船業界のなかでも低迷。「(事業拡大で)出るのは老人ホーム経営とか野菜栽培とか突拍子もない発想ばかり」(同社幹部)といった状態が今回の事件の背景にありました。
SSK前社長ら逮捕