2002年4月14日(日)「しんぶん赤旗」

諌早湾 前面堤防建設を計画
            完成すれば干潟再生不能に

 長崎県の国営諌早湾干拓事業で農水省は、造成中の干拓地(西工区)への海水流入を防ぐため、海側に面した前面堤防の工事を早ければ七月にも始める予定であることが分かりました。前面堤防が完成すれば、調整池に海水を入れても堤防で進入を阻まれ、有明海の環境改善の切り札である干潟の再生は不可能になります。

 農水省は昨年暮れ、干拓事業を進めてきた東西両工区のうち陸側の西工区だけを残す縮小案を発表。今回の計画は、西工区へ海水を入れないようにする堤防を建設しようというものです。

 九州農政局の「発注予定工事情報」によると、堤防の長さ四・三キロメートルを三工区にわけ、砂と砕石を積み上げて造っていきます。その基礎工事として、敷網、敷砂、軟弱地盤の改良工事を実施します。工事期間は九カ月から十カ月。建設資材として砂十三万立方メートル、砕石十五万六千立方メートルを予定しています。

 入札予定時期は第二・四半期としています。農水省は現在準備中の二カ月程度の短期の開門調査が終わった後で、早ければ七月にも入札を実施し、工事を始める運びです。

 問題なのは、諌早湾を閉め切ってつぶした元の干潟の大部分が西工区にあることです。

 農水省のノリ不作等調査検討委員会(第三者委員会)は、干拓事業が潮汐・潮流の減少など「有明海全体の問題に大きな影響を与えていることは否めない」として、できるだけ長く大きく海水を入れる開門調査を求めています。工事開始は同委員会のこの提言を無視することになります。


三者委提言に反する工事

 第三者委員会メンバーの東幹夫・長崎大学教授の話 元の干潟の浄化作用や有明海の潮汐・潮流の回復過程を調べるには元の干潟の大部分がある西工区に海水を入れ、干潟を再生することが不可欠です。元の東工区に海水を入れるだけでは、中途半端なデータしか得られないと研究者は心配しています。谷津前農水大臣も武部現大臣も第三者委員会の提言を尊重すると表明してきたのですから、その言葉の通りなら、少なくとも西工区の前面堤防の工事はやってはならないことです。