2006年長崎県知事選
 高村候補インタビュー

 一月十九日告示、二月五日投票で行われる長崎県知事選に、日本共産党も参加する「民主長崎県政をつくる会」から立候補する高村暎(たかむら・あきら)さんに、県政や知事選の特徴などを聞きました。
   
暮らし、九条守る県政を
  今回の知事選の特徴と争点について

高村 現県政は新たな基本方針として「ながさき夢・元気プラン」を発表しましたが、諌早湾干拓事業や長崎新幹線建設など、依然として大型開発最優先の計画です。一方で、生活福祉費や教育費など、暮らしの予算は八年前までの高田県政時の40%台とくらべ36.8%(〇五年度)に激減しています。県民が夢を語れるようなプランではありません。
 
 県政の主人公は県民です。県民の声を反映し、弱者に目を向け、福祉・暮らしを大切にする県政こそ必要なときだと思います。
 今回の選挙では、特に憲法九条を守る知事かどうかが問われます。「改憲」への態度は、日本を「戦争できる国」に転換させる政策に協力するのかどうかであり、県民を守るべき知事として重要な問題です。金子知事は県議会で問われても「九条を守る」と言いませんでしたが、私は憲法九条を守ります。

四年間の県政−県民の評価の目はきびしい
 公共事業の推進や市町村合併など、金子県政について

 高村 いまの県政は住民自治が軽視され、「議会で決めさえすれば-」といった姿勢が目立ちます。
 県の旗振りで推進されてきた市町村合併も、「サービスは高く負担は軽くと説明していたのに騙された」「こんなはずではなかった」などと、批判の声が多く寄せられています。
 

諌早湾干拓でも「早期完成で有明海は安定する」と工事がすすめられていますね

高村
 有明海異変は、潮受け堤防による潮流・潮汐の変化や、調整池に滞留した汚濁水の放出による底質悪化が元凶です。完成しても何の問題解決にもなりません。調整池の浄化には、今後も莫大(ばくだい)な税金が投入され続けます。造成農地は新たに五十三億円を投入してリース方式とされ、農地の管理・運営という負担が県民にずっと背負わされることになります。
 何より、漁業不振に苦しむ漁民の声を無視する県政は許されません。漁業関係者や家族の間では、「有明海から漁民がおらんようになるのを待っているのか」と、怒りは広がるばかりです。事業を凍結し、堤防の常時開放による調査を実施してこそ、有明海再生の展望は開けます。
 

新幹線問題でも強行姿勢ですが

高村
 国も県も財政難がすすみ、福祉が次々に削られています。新幹線長崎ルートを急がなければならない理由はありません。長崎や諌早の商店街で聞いても、「景気浮揚にはマイナス、必要ない」と店主らは話しています。ましてや県民の意向も聞かず、「佐賀県の負担分を肩代わり」してでも推進というのは正常ではありませんよ。
 このように、四年間だけを見ても県民の評価の目はきびしいですね。

一人ひとりの子どもを大切にする県政を
 前回の知事選後、高校入試制度が変更されましたが
高村 長崎は教育現場の“荒れ”の少ない県でした。四年前の知事選で私は、長く教育にたずさわってきた者として「高校入試の総合選抜制廃止は子どもたちの間の競争をいっそうかりたてる」と警告しました。残念ながらその後の経過は、私の指摘通りになっています。

 県教委は、総合選抜制廃止を「行きたい学校に行ける」と説明しましたが、いまは「有名大学合格者を増やすことが長崎県の人づくり」と、学校に合格者の数値目標さえ求めています。地域の高校が次々廃校になって超エリート校がつくられ、競争が激しくなり、子どもたちは行きたい学校どころか、入れそうな学校探しに苦しんでいます。

 教職員に対しては、成績に応じて賃金を決める新勤務評価制度を導入しようとしています。教員の間に手柄争いを求めるものです。そうなると、ますますドリルや練習問題重視となり、試験の点数だけで子どもが評価されることになります。日々の授業がおもしろくなくなるのは目に見えているといえます。
 

県内の相次ぐ少年事件や多発する子どもたちの自殺について


高村日本の教育史上でも例がないことです。少年事件の背景は複雑ですが、「人間として大事にされている」と子ども自身が実感することなしに、他人への思いやりや励まし合いの心は育ちません。
 最近は、子どもが学校の主人公になっておらず、一方で押し付けや「勝ち組・負け組」と決め付ける風潮が強まっているのではないでしょうか。主人公であるはずの子ども自身が、意見表明するシステムがないのです。少年事件が起こったり、有名大学への合格者数が問題になるたびに、現場の先生たちが多忙になっているのも問題です。
 
 「(日本の教育について)高度に競争的な教育制度によるストレスにさらされ、子どもが発達障害におちいっている」とした、国連の勧告にさえ背を向け、子どもたちに競争をあおってきた金子県政に教育を語る資格はありません。憲法と教育基本法に沿い、父母と学校、地域が協力して一人ひとりの子どもを大切にする学校づくりが必要です。


政治信条を教えてください


高村
学生時代に「松川事件」という謀略事件を知り、真実を追求し無罪をかちとる運動に参加しました。不条理がまかり通り、無罪の人が死刑となることは許されないからです。このときの「道理の通る社会にしたい」との思いが、その後の高等学校教職員組合や、「よみがえれ有明海!」訴訟支援の活動、県政刷新の活動の原点になっていると思います。
 好きな言葉は「知は力なり」です。論語の中の「学びて思わざれば則(すなわ)ち罔(くら)く、思いて学ばざれば則ち殆(あや)うし」‖学んでも考えなければ何にもならない、考えるだけでなく学ばなければならないの意‖も同じですが、私の力の源泉です。

「しんぶん赤旗」2005/12/23から12/24