連載 県知事選挙の争点 
@県政はだれのもの 暮らし・福祉優先の県政へ 
 五年前に妻を亡くした遠藤太郎さん‖仮名‖は、長崎市内の病院に入院中、痴ほうが進んでいます。一昨年の夏、前立腺(せん)の手術をして以降、それまでのように一人で暮らせなくなりました。
 身寄りがなくアパートにも戻れず、別の病院に入院したまま痴ほう対応共同住宅か介護老人施設(特別養護老人ホーム)への入所を待っています。もう二年になりますが、見通しはありません。
 ケアマネージャーは「高齢化が進み、遠藤さんのような人がもっと増えるでしょうね」と心配しています。
 長崎県内の高齢者で特養ホームへの入所を申し込み、待機している人は三千百四十四人(昨年五月現在)、介護保険が始まってからの一年半で一・八倍(長崎市と周辺域は二・三九倍)に増えました。この期間に増えたベッド数はわずか百床にすぎません。
 県は、二〇〇四年度までに約六百八十床増やす計画ですが、「施設を増やせば保険料に跳ね返る」といい、入所待ちは膨らむ一方です。
 前回の知事選で、金子知事が「長崎県に住んでいれば安心といわれる県政をつくる」と言ったことばはどこにいったのでしょうか。
 子ども三人を抱える長崎市の池上明子さんは、「多くの県が実施しているように、乳幼児医療への助成は、病院での窓口払いがいらないように現物給付にしてほしい。緊急の時を考えると不安で」と訴えています。
 長崎県では、病院窓口で医療費をいったん支払い、その証明書をもって還付を受ける償還方式です。このままでは受給者にとって利用しにくく、還付手続きをしないままの人が三割にのぼるといわれます。現物給付への切りかえは、やる気があればすぐにでもできることなのに、県は「市町村と協議して」という姿勢です。
 知事の第一の仕事は、何よりも県民の暮らしを支えることのはず。それなのに、県内で九百人も不足している看護職員を養成する役割を担った、県立看護学校の授業料が本年度42%値上げされました。
 高校授業料に至っては二十八年連続の値上げで消費者物価の伸び率の四倍、県の施策が教育費の父母負担を引き上げる役目を果たしています。
 本年度予算を見るだけでも、公共料金値上げや負担増によって県民が受ける被害は五億円にのぼり、過去最高です。
 県民生活を直接支える予算は全予算の33%、歴代知事で最低水準です。前の高田県政十六年間の平均と比較しても5・24(約四百四十億円)も少なくなっています。
 日本共産党の中田晋介県議はいいます。
 「知事が掲げた『豊かさが実感できる県民生活づくり』とはおよそかけ離れた、弱いものいじめの予算」と。
 一方では、諌早湾干拓や、経営が悪化したリゾート施設・サンセットマリーナなどへは県費をどんどんつぎ込むのですから、長崎県政は逆行しています。
   ◇   ◇
 国民の間に、「生きづらい世の中になるのではないか」という不安が強まる一方で、長野県の脱ダム宣言や山形県の少人数学級など、新しい地方政治の動きも始まっています。このような時だからこそ、「暮らしを守る防波堤となる県政」「県民参加の民主県政」への転換が切実に求められています。一月十七日告示(二月三日投票)の長崎県知事選の焦点を分野ごとに追いました。

◇高村さんの政策から◇ 暮らしむきの予算を増やし、六歳までの医療費無料化、国保税の引き下げ、介護保険料・利用料の軽減に取り組みます。
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A諫早湾干拓 推進の人は応援できない
 「自民党とのつながりがあるばってん、表向きは金子知事。しかし、こんどばかりは、諫早干拓すすめる人ば、応援できん」
 島原半島や諫早湾の漁業者が集まると、こういう声が飛び交っていると、ある漁協幹部が打ち明けました。
 農水省が中断していた国営諫早湾干拓事業の工事再開を強行し、有明海の漁業者に猛反発が広がっています。
●県民世論は「力を入れる必要なし」
 工事再開への抗議には、有明町漁協や島原漁協の組合員はじめ、長崎県の漁業者が「私たちにはもう後がない。工事再開よりも、水門開放調査が先だ」と駆けつけました。
 長崎県民全体の世論も、県自身の調査で、回答者の57%が「力を入れる必要がない施策」(第一位)としています。
 県民世論とは正反対に、金子知事の推進・固執ぶりは際立っています。
 農水省でさえも、漁業者・国民の世論と行動に押され、有明海再生とは相いれない内容の「縮小案」ではあるものの、「見直し」のポーズだけは示さざるを得ませんでした。
 しかし、金子知事は、そうした「見直し」であっても、「計画通りの推進」を言い続けて、受け入れるにあたっては、「工事の本格的な再開を条件」にしたほどでした。
●政府の答弁でも根拠くずれる
 諫早湾干拓事業の目的は、農地造成でも、防災でも根拠を失っています。
 農水省の「見直し縮小案」で造成する農地は、約七百f。ところが、耕作されていない遊休農地は、県全体でその八・五倍の五千九百fにのぼっています。
 防災についても、工事再開に抗議して詰めかけた福岡、佐賀の漁業者は、こういいました。
 「防災は、佐賀方式でやればよか」
 「柳川ば、来てみんですか。どがんして、干拓ば防災にすっとね」
 低平地の住民が悩んでいる湛水(たんすい‖水がたまること)被害にしても、排水不良にしても、堤防や排水路を整備し、揚排水ポンプを増設するのが、常道です。
 しかも、防災を口実に干拓事業にしがみつく理由は、政府自身の答弁で崩れています。
 日本共産党の小沢和秋衆院議員の質問主意書に対し、小泉内閣は「降雨の状況により、背後地に湛水が生じる」「調整池の水位をマイナス一メートルに保つことを基本に、関係機関が連携を図り排水路の整備等を実施」と答弁し、干拓事業だけでは湛水被害も、排水不良も解決しないことを認めたからです。
●旧堤防改修とポンプの増設こそ
 高村映候補は、諫早湾の干潟を守る長崎県共同センター代表として、諫早干拓の中止・反対の運動の中心の一人として、長崎はじめ有明海四県の漁業者からも、深い信頼を集めています。
 八日、高村候補が、工事再開に抗議している漁業者の激励に駆けつけると、他県の漁業者から「長崎は、知事を変えんばいかんとよ」の声が上がりました。
 高村候補は、「県民の意見を反映させるのが住民自治」と語り、県民が「力を入れる必要がない」という諫早干拓事業をきっぱり中止させ、福祉や教育に力を入れると、こう訴えています。
 「諫早干拓を中止し、干潟と有明海再生の道を開き、防災対策は旧堤防の改修やかさ上げ、排水ポンプの増設を緊急に進める」

◇高村さんの政策から◇ 
 諫早湾干拓事業を中止し、干潟と有明海の再生、防災対策の両立をすすめます。
 
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B 教育 少人数学級は時代の流れ
 昨年三月に中学校を卒業した長女を、県立長崎西高校に通わせている上島義則さん‖長崎市・仮名‖は、「総合選抜入試でしたから、激しいよけいな競争をしないでも入れるんじゃないかと、安心感みたいなものはありました」と、娘の入試当時を振り返ります。
 長崎県は他県と比較して、これまで生徒の中途退学などが少ないといわれてきました。
 県高等学校教職員組合の西本一朗委員長はその理由を、「高校ごとに通学区域(48通学区)を定め、総合選抜の入試制度を守ってきたことが大きい。比較的家に近い学校に通え、中学校で不要な競争を強いられないことが、子どもに安心感を与え、地域に守られて成長する土台になっている」と説明します。
 ところが金子県政は、高校「改革」と称し、「行きたい学校に行ける制度」「特色ある学校づくり」をうたい文句に、総合選抜制廃止と通学区域の拡大を狙っています。
 「行きたい学校に…」などといいますが、総合選抜校では「今の学校は行きたい学校だった」が63%、「行きたくない学校で入学後も不満」と答えたのはわずか3%(長崎高教組が実施した高校生アンケート)にすぎません。
 通学区を拡大し、入試制度の改変を強行したところでは、「少年事件多発の背景に、受験中心の教育とそれがもたらす殺伐とした人間関係がある」(岡山)、「高校中退率が急増、高校の数ほど学校格差が生まれた」(埼玉)と報告されています。
 全国の例から学ぶべき教訓は、「金子県政が目指す『改革』では、不要な競争や長時間通学、交通費の過重負担が強いられ、学習時間や課外活動など高校生活にゆとりが持てず、子どもの苦しみを増大させる」(西本委員長)ということです。
 教育費の父母負担の増大も深刻で、私立学校の教育費は公立の約五倍にもなります。毎年の高校授業料値上げだけでなく、模擬試験や補習テキスト代、進学合宿などの学習費用がこれに拍車をかけています。
 いま、子どもの学力低下など、教育課題の解決のため少人数学級への転換が注目されています。
 山形県が他に先駆けて、公立の小・中学校で三十人学級の実施を打ち出しました。「基礎的学力向上と雇用拡大」がねらいで、長野、福島、北海道など他県でも同様の動きが生まれています。
 金子県政は、前県政にくらべて平均で4・3%も教育費を削っておきながら、三十人学級を求める声に対し、「財政的に難しい」と消極的です。
 しかし県の試算でも、必要な財源は小・中で百十億円、本年度の教育予算を1・1%増やすだけで実現できます。しかも、これで千三百人の雇用を拡大できるのです。
 日本共産党の西村貴恵子県議は、「県の発展を担う人材を自ら育成するためには、県政の場に三十人学級実現を目指し、学校現場を経験した教育の専門家が求められている」と強調しています。

 ●高村さんの政策から●
 いまの高校通学区と総合選抜制度を守り、三十人以下学級の早期実現をはかります。
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Cくらし・営業 県民生活支える県政を
 失業、倒産、医療改悪・国民負担増…。いま小泉改革が経済もくらしも福祉も台無しにしています。
 その被害が、長崎県民に重くのしかかっています。「国の政治がこんなにひどいときだからこそ、県政が住民本位に変わってほしい」−−高村暎(あきら)候補の演説会に参加した前川美穂さん(39)は、こういいます。
 大型店の進出が県内最大の大村市のアーケード街では、ある店主夫人が嘆きました。
 「初売りが様変わりして、売れなくなった」
 大村市は、小売店の売り場面積の大型店の占める割合が、六割を超え、県平均(36%)を大きく上回っています。不況と大型店進出で、アーケード街の人通りも減少。「痛みをともなう改革といいますが、痛みは私たちがもういちばん感じています」
 雇用情勢でも、長崎県はひときわ厳しさを増しています。有効求人倍率は、九州最悪(〇・四倍)。沖縄と東北に次ぐ低い数字です。
 とくに、職を求める人(有効求職者数)が、対前年比で、六十三カ月増加し続けています。「有効求職者数が減らない」(長崎労働局職業安定課)のが特徴です。ことし卒業する高校生の就職内定率も53・2%と深刻です。
 県内の昨年の倒産件数は、一九八九年以降で最多。建設業関係の倒産に続いて、小売業の倒産が増えています(東京商工リサーチ長崎支社調べ)。同支社は「小売の倒産には、ここ二、三年、大型複合商業施設がオープンした影響があった」と分析します。
 金子知事は、長崎市の商店街に大打撃を与えた「夢彩都」関連に二十五億円代の無利子融資をしたり、ソニーの諫早工場建設には十五億円の補助金を出すなど、大企業や大型開発には大盤振る舞いし、県民のくらしや福祉に冷たい姿勢をあらわにしています。
 倒産・失業を放置し、大銀行・大型開発中心で、国民に冷たい小泉改革をそっくりまねているのが、金子県政です。
 しかも、その効果にいたっては、“大型開発は景気回復に役立たない”と金子知事みずからぼやくほど。
 農業県・漁業県なのに、諫早湾干拓事業を推進し、「宝の海」をつぶし、農業改良普及センターを半減させたのも、金子知事です。
 「地元商店街や農家、漁民が泣いているのに、県外大手企業には手厚い」
 高村暎(あきら)候補は、金子県政をこう批判し、「県民生活を支える県政がどうしても必要」と訴えています。

高村候補の政策から
○公共事業は、特別養護老人ホームなど県民要求に合致し、地元がうるおうものに。
○地元商店(街)、農漁業の振興でこそ長崎県は元気になります。きめ細かい地場産業育成策を。
○福祉・教育など生活関連予算を増やし、県民生活を応援する。

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D情報公開と市町村合併
 前回の知事選で金子知事は、「情報公開の徹底で公平・公正な県政」「県民に選択肢を与え、民意に答える」と公約しました。四年間、「行政にとって都合の悪い情報も含めて県民に提供」(金子知事)されたのか。
 諌早湾干拓推進の一方的な大宣伝をはじめ、金子県政の施策にそわない情報は闇(やみ)の中で
した。その典型の一つが、国・県主導による市町村合併にかかわるデメリットの情報です。
 金子県政は、全国に先駆けて合併推進室をつくり、七十九の自治体を十三にする具体的な要綱をつくって強力に市町村合併を推進しています。
 県の広報紙「県政だより」でも、合併に追い込む宣伝ばかり。公正な情報を提供し、住民に意見を聞こうという姿勢はまったくありません。

 南北の道のり百二十`の中にある六町を、人口四万二千人の「市」にしようという、対馬の場合はこうです。
 「対馬を均一に発展させるための合併」といって特別交付金や特例債をちらつかせ、合併協議会の会長に元副知事をすえました。難問だった新庁舎の設置場所について、当面は厳原町役場に置き、本格的には再協議。議会は豊玉町、教育委員会は上対馬町と分散。各町の借金処理は合併後にと、肝心なことは先送りです。
 町民の間では、「役場が遠くなるなら合併せんでよか」「合併してどうなるのかわからん」という声が多く、日本共産党の武本哲勇・上対馬町議は、「合併協の結論は、子どもだましの妥協の産物」と白紙撤回を求めています。

 宮入興一・愛知大学教授は、「合併後十五年で交付税はほぼ半減、職員は約六割、議員は約三割となり、住民の声はますます行政に届かずサービスは低下する」「デメリットを十分検討するためにも住民参加と情報公開が不可欠」と指摘します。
 金子知事は昨年九月、全国知事会議で、「合併すれば職員が大幅に減少し、地域の雇用減につながる。合併はしたが雇用の受け皿が減り、人口が減るということでは何のための合併かとなる」として、「それを穴埋めする思い切った地域振興策を」と求めていました。合併のデメリットを承知のうえで推進しているのです。

 諌早市などですすめられている大型ゴミ焼却場建設計画も同じです。住民の理解と協力が重要」とのべながら、広域圏環境組合を隠れ蓑にして、議会も市民もしらないうちに計画をすすめてきました。
 市民団体は、「ゴミの減量・リサイクルの時代に、なぜ大型炉による焼却中心の計画か」「大型になるほど被害は大きい。安全性をどう考えているのか」と、金子知事に説明と計画の再検討を申し入れました。
 参加者は、「対案を示してもらいたい」と繰り返す担当者の姿勢に、「県は自分たちの都合のいいことばかり言い、都合の悪いことは責任逃れと開き直りの態度だった」と語ります。

●高村さんの政策から●
・住民の声を無視する市町村合併の押し付け、大型ゴミ焼却場建設は見直し。正確・公正な情報公開と県民参加を保障します。
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E平和 出撃拠点化を許すのか

 米海軍佐世保基地と自衛隊佐世保基地は増強され、戦争の実行拠点の姿をあらわにしています。長崎港への米艦船入港、長崎空港の軍事利用もひん繁です。
 
 県民900人が戦地で正月迎える
 「戦後の歴史の大転換が佐世保から強行された」。山下千秋・原水爆禁止佐世保協議会理事長は、昨年末こう回顧しました。米国の報復戦争へ参加し、インド洋上にいるとされる自衛隊艦船五隻中四隻が佐世保から出撃したのです。
 戦地に行って正月を家族といっしょに過ごせなかった自衛隊員は約千五百人にのぼり、そのうち九百人が長崎県民です。
 自衛隊の派遣以来、山下理事長には、自衛隊員の家族から心配の声が寄せられています。「息子が出ていきました。そんなに自衛隊を参加させたいなら小泉首相の息子を行かせたらよいのに」 「あなたたちが反対してくださるから上層部が暴走せずにすむのです」
 佐世保市民を対象に自衛隊派遣の是非を問う世論調査(西日本新聞)でも、反対が53%で賛成を上回りました。

 戦地への派遣、金子知事は容認
 日本の参戦、県民の戦地への派遣という事態に直面しているのに、戦場に送ることを容認し、県民の生命をまったく顧みない態度を示したのが、金子知事です。
 「外交・防衛については、国の専管事項なので、コメントを差し控えさしていただきたい」
 金子知事は昨年の十二月県議会でこう繰り返しました。日本共産党の中田晋介県議が「被爆県として、平和の決意を世界に示すためにも、憲法違反の戦争参加に反対し、戦争の中止を求める平和の声をあげよ」と求めたのに対する答弁です。
 中田県議は「国の外交防衛施策で県民の安全が損なわれる時には、県民の利益の立場でものをいうべきだ」と厳しく批判しました。
 この問題は、被爆県の知事の資格にかかわる重大問題として、知事選で問われています。

米軍基地強化に新たに県有地提供
 しかも、金子知事は、四年前の就任後すぐ、米軍佐世保基地増強(米軍住宅建設)のため県有地七千九百万平方bをあらたに提供し、その後、西海町のLCAC(エアクッション型揚陸艇)基地建設を容認するなど、基地増強に加担してきました。
 昨年大みそかに、佐世保に米弾薬船が入港し、十四日から弾薬の積みおろしが始まり、米海兵隊の演習のため日出生台に運ばれると見られています。
 弾薬の陸上輸送について、金子県政はいっさい明らかにしてきませんでした。
 「民主長崎県政をつくる会」の高村あきらさんは、一貫して核兵器をなくす運動に力をつくし、「教え子を再び戦場に送るな」を教師としての原点にしてきました。熱を込めて、きっぱりいいます。
 「被爆県長崎には平和を守る県政をすすめる使命がある」
●高村さんの政策から
 自衛隊の海外派兵、米軍基地強化に反対し、反核平和の長崎県をめざします

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