長崎県政への私の思い
                     二〇〇一年十一月三十日
                   民主長崎県政をつくる会代表世話人                              高村  暎

 
 私は長年、教職に携わるとともに長崎県高等学校教職員組合執行委員長を努めるなど、教職員組合運動にかかわり、教育制度、教育条件、教職員の生活と権利についてその要求実現を求めてきました。また、ここ数年、「諌早湾の干潟を守る長崎県共同センター代表」として諌早湾干拓事業の見直しを国および長崎県に求めてきました。私はこのような経験を通して、長崎県政と直接的に相対する機会を得、同時に金子県政の現状について少なからず危惧の念を抱いてきました。

一、いま国では小泉「改革」が強行されようとしています。この路線は、一九九〇年代からの社会保障・社会福祉解体政策を引き継ぎ医療「改悪」をすすめるとともに、リストラを支援して史上最悪の失業は放置するなど、国民に堪え難い痛みを押しつけるものです。その一方ではムダな公共事業は依然として続け、その結果、国は三十年かかっても返済できない借金を背負うようになりました。また、教育を含め多くの分野で「規制緩和」をすすめることで、社会全体に激しい競争がつくりだされて、弱者に生きづらい社会、人間が人間として大切にされない社会が到来しようとしています。
 金子県政も基本的にはこのような国の政治を踏襲しています。行政改革と銘打ち、県民生活に直結する諸施策の水準を切り下げ、そのため環境保健費、生活福祉費、教育費が予算に占める割合は年を追って減少しています。今後も県立高校の統廃合、福祉事務所と保健所の統合、多良見病院の民営化、県職員の削減、給与への成績主義の導入などが準備されています。一方では、大企業優遇策である大型開発が目白押しです。その結果、不況による税収減も相俟って、県債残高は一兆円に達しようとしています。
 私は人間が人間として大切にされる長崎県を、大型開発優先から医療・福祉・教育を支援する県政に転換することによって実現することこそがこれからの県政の課題であると考えています。

二、なかでも、諌早湾干拓事業を中止する決断をすることは長崎県政が真に県民と諌早湾・有明海沿岸住民の利益に立つかどうかの試金石です。金子県政はあくまで諌早湾干拓事業の「計画通りの推進」を主張して海水の導入による干潟の全面回復に反対しています。しかし干拓事業も、干拓による防災事業もすでに破綻していることは明らかです。「有明海異変」の主な原因が諌早湾干拓によるものであることが多くの科学的調査で明らかになっています。干拓によらない防災事業こそがもっとも効果的であることも明らかです。未来の世代のために諌早湾干拓事業は中止して、諌早湾と有明海の再生、そして沿岸低平地の防災事業を佐賀方式で施行する新たな事業に転換すべきです。

三、私は長年教育に携わってきた一人として、教育基本法の改悪と国と長崎県がすすめようとしている教育の新自由主義的改革ー教育へ市場原理を導入し、子ども同士の競争をしかけ、学校選択の自由化、多様化、統廃合を強行する施策に反対するものです。このような「改革」のねらいは、教育基本法がめざす「人格の完成」の理念に著しく背馳し、教育を競争の場に変え、国家に忠誠を誓い企業社会に役立つ「人材」を差別選別的に育成しようとするものです。
 長崎県の普通高校四十八通学区と三地区十校の総合選抜制度は、全国にほこる最良の制度です。長崎県の子どもたちは、この制度に守られて健全に成長しています。私はこのような、すぐれた長崎県の制度は守りつつ、三十人以下学級を段階的にすすめるとともに、橋本大二郎知事が率先して提起した「土佐の教育改革」に学んで、地域・保護者・生徒参加の教育改革・学校改革をすすめることが大切であると考えています。

四、私は自衛隊の海外派兵に反対します。「教え子を再び戦場に送るな」は、私が長年携わってきた教職員組合運動の原点です。憲法九条が守られ平和な長崎県であることこそ被爆県民の願いであり、この願いにこたえる施策がもとめられると考えます。

五、私は「県民が主人公」という住民自治の立場を貫くことこそ、県政を「県民に見える県政」「県民が参加する県政」に変え、地方自治と民主主義を長崎県の隅々に行き渡らせ、住みよい郷土長崎県をつくる基本施策だと考えます。 
 11月30日、記者会見で表明された「県政への思い」を紹介します。