小沢和秋議員
被爆地域拡大問題での質問(2回目)
                      2000年11月17日 厚生委員会

 2000/11/17の厚生委員会での質問のうち、長崎県の被爆地域拡大問題で質問した部分の議事録です。
○小沢(和)委員 では、残りの時間で、さきの臨時国会に続いて、長崎の原爆被爆指定地域拡大問題についてお尋ねをしたいと思います。
 八月九日の平和祈念式典に出席した森首相が、厚生省に証言調査報告書を精査、研究するよう命じたと発言をいたしました。それを受けて、保健医療局長の私的諮問機関として検討会が設置され、既に十月五日に第一回目が開かれました。
 私は、PTSDを中心にして検討するだけでは不十分だと思います。先日も大阪高裁の原爆症の認定をめぐる裁判で、政府は松谷訴訟を含め五度目の敗訴判決を受けております。これまで政府が認定拒否の根拠にしてきたDS86そのものの信頼性が大きく揺らいでおります。遠距離被爆の放射線量、その打撃がこれまで考えられていたよりずっと大きいことが明らかになってきております。
 そういう角度からも、被爆した人々の被爆証言を謙虚に聞き、指定地域の拡大をすべきではないか。お尋ねします。
○篠崎政府参考人 御指摘の原爆被爆者対策基本問題懇談会におきまして、原爆放射線による健康被害が一般の戦争の被害とは一線を画すべき特別な犠牲であることや、その対策が他の戦争犠牲者と著しい不均衡を生ずるものとなってはならないことを被爆者対策の基本理念といたしております。
 このような考え方に基づきまして、被爆地域の指定につきましても、科学的、合理的な根拠がある場合に限定して行うべきという基本的あり方が示されているところであります。
 このような被爆者援護対策の基本理念やあり方にかんがみまして、科学的、合理的な根拠を抜きに被爆地域指定の問題を検討することは適切ではないと考えております。
 なお、今御指摘の判決等につきましては、原爆症の認定に関しまして、個々の疾病の放射能起因性などについての判断を示したものというふうに理解をしておりますので、被爆地域指定の問題とは性格を異にするものというふうに考えております。
○小沢(和)委員 私が特にお尋ねしたいのは、この検討会で、検討会の出発点が昭和五十五年の基本懇答申だと確認したということです。これはどういう意味か。この基本懇答申を機に、それ以後、地元の指定地域拡大要求はすべて拒否されてきております。
 だから、それを出発点だと言うんだったら、この検討会はノーという結論を出すために検討したという体裁をつけるだけのものになりかねないのではありませんか。
○篠崎政府参考人 ただいま御答弁を申し上げましたけれども、十月の五日に第一回の会議が開催されましたときには、長崎市が取りまとめられました証言調査報告書における科学的、合理的な根拠について精査、研究することを目的としてこの会が設置をされたわけでございまして、この調査報告書に関しましては、精神的影響の評価のほか、身体的影響の評価や被曝線量の評価などについても幅広く検討する必要がある、このような会議の中身でございました。
○小沢(和)委員 私は、ここに八月九日に森首相が記者会見で発言した全文を持ってまいりました。大切だと思われる部分をちょっと読んでみたいと思うんです。
 この未指定地域の皆さんでも、健康不安であるとかそういう心的外傷後のストレス障害というのがあるという以上は、やはりそういう人たちに対しては手厚く十分なことを考えてあげるということは国としては大事なことだな、今そういう御質問を受けて、また、きのう御質問の趣意書をいただいて、そんなふうに私自身も感じました。これは、今、厚生省にも命じたのでありますが、今回、長崎市が中心となって証言調査報告書というものをおまとめになったそうでありますから、ぜひこの資料を十分に精査をして、そして、余り長い間、いつまでも一つの考え方にこだわるということではなくて、できるだけ多くのそういう苦しみのある方に対してしっかり政治が手を差し伸べていくということは大事なことだと私は思います。そこで、この貴重な資料を十分に精査して、研究するように厚生省に命じました。
 こう述べた後で、森首相は、帰ってから厚生大臣にそのことを申し上げたいと言って発言を終わっております。だから、大臣には直接そういう指示があったんじゃないですか。
○津島国務大臣 全くそのとおりでございまして、八月九日の式典後に、総理が専門家の意見を聞くなど精査、検討するようにということを発言され、そのとおり私に御指示がございました。
 原爆被爆者援護法の対象となる被爆地域につきましては、旧原爆医療法制定以来、種々の経緯のもとに定められてきたわけでありますが、昭和五十五年に被爆者対策の基本理念を明らかにした、先ほど委員が触れられた基本問題懇談会報告におきまして、被爆地域の指定は科学的、合理的な根拠のある場合に限定して行うべきものとされたものでございます。
 政府においてはその後一貫してこの考え方に沿って対応してきておりますので、今回の総理の御指示に当たって、検討会においてもこのような考え方に基づいて精査、研究されると思っております。
○小沢(和)委員 時間が来たようですからぼつぼつ終わりたいと思いますけれども、失言ばかりして今いよいよ窮地に立っている森首相ですけれども、私は、この八月九日の発言はなかなか評価できるというふうに思っているんです。
 この発言は思いつきじゃないんですね。さっき読んだ中にもありますように、昨日御質問の趣意書をいただいてということで明らかなとおり、首相は前の日に指定地域拡大について聞くと事前連絡を受けて十分に用意した上で、いつまでも一つの考え方にこだわるということではなくと述べている。このいつまでも一つの考え方にこだわるということではなくということは、私は、これまで厚生省が基本懇答申に縛られていたことについてこういうふうに述べたのだというふうに理解する以外、前後の関係からは理解のしようがないと思うんですよ。
 だから、この首相の指示の方向に従って、地域指定の拡大、是正を前向きに検討するように重ねて強く要求して、私の質問を終わりたいと思います。